第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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ドンッ!! 鈍い音、強い衝撃、一瞬止まった息、 意識が朦朧とする、目がチカチカする、 視界に映るなにもかもが白っぽい、 ウチは落ちたんだ。 ジーナの指を掴み損ねて、崖から、下まで。 身体が痛いよ、動けないよ、ウチ……死んじゃうのかな? パパ、ママ、助けて、 ジーナ、たすけて____ ____不安と恐怖、痛みと気怠さ、 耳の奥がわんわん言ってる、セミの声が頭の中で反響してる。 うるさくてたまらない、汗もかいて気持ち悪い。 オウチに帰りたいな。 シャワーを浴びてアイスを食べて少し眠るの。 これはきっと悪い夢。 眠って起きたらジーナとウチは元通りの仲良しだ。 ああ、久しぶりにお泊りしたいなぁ。 ジーナの部屋でもウチの部屋でもどっちだってかまわない。 パジャマになってベッドの上にお菓子を広げて、朝までずっとおしゃべりするの、楽しいだろうなぁ。 ジーナ、大好きなジーナ、小さい頃からずっと一緒で姉妹みたいに育ったの。 ジーナ、ごめんね、ウチ、ごめんね。 「マジョリカ!」 あ……ジーナの声だ……来てくれたんだ……、 幼馴染の足音が、だんだんウチに近付いてくる。 身体が痛くて動かせないから、顔を上げる事が出来ない。 でも分かるよ、聞き慣れた足音だもの。 「マジョリカ……! 大丈夫!?」 大きな声が上から降って、ジーナがウチを覗き込む。 額に浮かぶ玉の汗が、雫となってウチに落ちる。 ジーナ、急いで来てくれたんだね、ありがとね、心配かけてごめんね。 あのね、ウチ、身体が動かないの、レスキューを呼んでくれる? それとママに電話を。 そう言おうと思ったのに、喉が締まって張り付いて、うまく声が出てくれない。 それでもジーナは分かってくれた。 カバンの中から携帯電話を取り出して、「レスキュー呼ぶから!」と言ってくれたんだ。 やっぱりジーナは優しいよ。 ウチの事が嫌いなのに、こうして助けてくれるんだもの。 「…………ジ……ナ、」 息を吸うたび肺が痛む、喉は張り付き息苦しい。 だけどウチは、無理に声を出したんだ。 辛いけど、痛いけど、気持ちを早く伝えたかった。 ”ありがとう” と ”ごめんね” を今すぐ言わなきゃいけない気がして、すっごくすっごく頑張って……聞こえたかな、大丈夫かな、 「マジョリカ……! 大丈夫!? あぁ……ごめん……私……ワザとじゃないの……まさか落ちてしまうなんて……」 ジーナは気付いてくれた。 ごめんとウチにあやまってるけどチガウの、あやまるのはウチの方なの。 それにこれは事故だから、ウチもジーナも悪くない。
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