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「ねぇ、ユリちゃん。お爺ちゃんに触る事は出来る?」
「それはできないかなぁ。爺ちゃんが帰ってきた時、嬉しくて抱きつこうとしたのに、スカって爺ちゃんを通り抜けて床に倒れちゃったんだ。あれ痛かったなぁ」
「そうなんだ。じゃあユリちゃんの目にお爺ちゃんはどんなふうに視える?」
「どんなふうにって……普通だよ、昔と変わらない。ぜんぜんお化けっぽくはないの。テレビで見る幽霊とは大違い。青白くないし、足もあるし、ウラメシヤなんて言わないし。こんな日焼けしたマッチョマンが幽霊とか笑っちゃうよねぇ。あ、でも1つだけ幽霊っぽいっトコがある! なんかね、ぼわわーんって光ってるの!」
ふむ……ユリちゃんの目に映るお父さんは、身体のどこにも欠損がなく、生前と変わらない見た目に加えて、身体全体は光に覆われている、その視え方って社長とほぼ一緒なんじゃないか?
そして僕とユリちゃんのやり取りを聞いていた社長がおもむろに口を開き、
「おまえ、ユリだったっけ?」
今日会ったばかりの女の子をいきなり呼び捨てにした社長は、右手のひらをハンドルに添えながらミラー越しに言った。
「陽炎みたいに見えるのか?」
それに対しユリちゃんは、
「え……? 陽炎……? あ! あー! そうです! そんな感じです! たき火の時とか、すごく暑い日に見える、ぼわわーんとした……」
「揺らめき、だろ?」
「そう! 揺らめき! アレがね爺ちゃんを包んでるの。そこが唯一幽霊っぽいかなぁ。神々しい感じというか、」
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