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「彼ね、マジョリカの事がすごく好きなんだって。綺麗で頭が良くて、それをちっとも鼻にかけない優しい女の子、アンタは理想なんだって。いいなぁ……うらやましいなぁ……彼ね、マジョリカの髪も好きだって言ってたよ。そうだよね、長くて艶があってとってもキレイだもの。うらやましい……私がこの髪を持ってたら、彼は私を好きになったかな。ねぇ、この髪私にちょうだいよ、いいでしょう?」
ちょうだいって……え?
ジーナはウチの髪をひと房掴んだ。
丁寧に、大事そうに、そして____
____ジャキ、
髪を切る音が耳のすぐ近くで聞こえた。
嘘でしょ……待って、お願い待って、髪は、髪だけは駄目、
「彼ね、髪の長い女の子が好きみたい。私も伸ばそうかな、でもな、似合うかな、マジョリカはどう思う?」
ジャキ、ジャキ、
待って、待って、待って、お願、
「髪……サラサラだ……ああ、嫌い、綺麗な髪も、良い子ぶった話し方も、実際に良い子なのも、ぜんぶきらい」
ジャキ、ジャキジャキ、ジャキ、
泣きながらウチの髪を切るジーナ、やめてほしいのにやめてくれない。
髪……ウチの大事な髪……ずっと大事に伸ばしてきたのに、
ああ……やめて……お願いだからやめて、
ジャキ、ジャキ、ジャキ、ジャキ……頭が一気に軽くなる、
とうとう切る髪がなくなったのか、ジーナはやっと手を止めた。
「………………あはは、マジョリカの髪、ぜんぶ切っちゃった。ねぇ、これでも良い子でいれる? ”ウチのせいでごめんね” って言える? いつだって上からだよね、嫌い、マジョリカのそういうトコ。だけど……こんな私はもっと嫌い」
疲れ切った顔で呟くと、ジーナは散らばったウチの髪をカバンの中にぎゅうぎゅうと詰め込んだ。
その姿が怖くて切なくて、見てられなくて、だけど身体が動かないから、目線だけを横に逸らした……その時だった。
視界に見慣れないものが映ったの。
あれはなに……?
空のうんと高い所、そこから金色に輝く何かがこちらに向かって伸びてくる。
ゆっくりと、だけど確実に、近付くにつれ眩しくて目が開けていられない。
不思議な事に、こんなに眩しく大きな物なのに、ジーナは気付いていないようだった。
泣きながらウチに視線を落としてる。
まさか……見えて……ないのかな?
だとするとあれは……?
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