第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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視えるようになった(・・・・・・・・・)” って……どういう意味……? このヒト……誰……? いつからいるの……? そもそもヒトなの?  カラダは大きく赤黒くって、全体的にデコボコしてて、肌はヌメヌメしてるんだ。 服らしきものは身に付けていない、男か女か、それさえも判断出来ない。 ただ、声の感じは女の人と言えなくもない。 極端に左に寄った頭部。 そこに貼りつく歪んだ顔は思わず目を逸らしたくなる。 左右で大きさが違う目は、白目が黄色く汚く濁っているし、鼻は無くて2つの穴だけ開いている。 そして、耳まで裂ける大きな口には乱杭歯が見て取れた。 目の色同様黄色く濁り、どの歯もぐらついているのか、喋ったり笑ったりするたびに小さくカチカチ鳴っていた。 『マジョリカァ、ほら視てごらん。ここにお前の死体が転がってる。残念だったねぇ……ヒヒヒヒヒ、お前は死んだ、ジーナに殺されたんだ』 このヒト……ウチとジーナを知ってるの……? でもウチは知らないよ、こんなヒト会った事がないもの。 『…………あ、あなたは誰……? どうしてウチらの名前を知ってるの? それと……”視えるようになったのか” って……それどういう意味……?』 本当は、質問だけじゃなくて、”ウチが死んだのは事故であってジーナに殺されたんじゃない” そう訂正したかった。 だけど……怖くてそこまで言えない。 『意味? 察しが悪いねぇ、少し考えれば分かるだろう? ほんの少し前、マジョリカが生きてた時はあたしの姿は視えなかった、だけど死んだ途端視えるようになった。それはあたしが幽霊で、マジョリカも同じ幽霊になったから視えるようになったんだ。生きてる奴らは霊力者でない限り霊の姿は視えないからね。……それからなんだっけ? どうしてあたしがお前達を知っているかだっけ? それはね、マジョリカ・ビアンコ。あたしは、ずうっと前からお前達の傍にいたからだよ。それこそオネショをしていた幼い頃からだ』 そう言ってニィッと笑う大きな口の両端は、稲妻みたいな亀裂が入る。 怖くて不気味で堪らない、でも……視た目よりもっと怖いのが…… 『……そんなに前から傍にいたの……? なんの為に……?』 ウチもジーナも霊感なんてない、幽霊なんか視た事がない。 だから知らなかったんだ。 こんなヒトが……ずっと傍にいたなんて……怖いよ……一体なにが目的なの? 『なんの為に? そんなものは決まってる。生者の身体をいただく為さ。ずっと……ずっと機会を待っていた。簡単な事ではないからね。本当は……マジョリカ、お前の身体が欲しかった。美しくて健康で、おまけに皆から愛される。お前にとって代わったら生きてくのが楽しそうだと思ったからだ。でも駄目だった……つけ入る隙がない、だから諦めてジーナにしたんだ。コイツは隙があった。長年お前と比べられ、苦しんでいたからね』
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