第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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鳥肌が立つ。 ”生者の身体をいただく” ……要は、幽霊が生きてる人の身体を乗っ取るという事だよね? そんな事が出来るの……? 出来るとして、その為だけに長い事ウチらの傍にいたの? 最初はウチを狙ってて、駄目だからジーナにしたって言ってたよ。 ジーナにはつけ入る隙があたって……その原因は……ウチだ。 肉の塊は口角に稲妻を走らせながら、泣いているジーナをジッと視て、それからこう続けたんだ。 『ジーナはガキの頃から傷付いてた。付け入るのに持って来いのグジュグジュの傷を持ってた。だから囁いたんだよ……耳元で ”辛いのは全部マジョリカのせいだ、マジョリカを憎め” って。毎日毎晩何年も、何年もねぇ』 何年も……? 酷いよ……ウチらに何の恨みがあるの……? コイツのせいでウチは……ジーナは……! 『10年以上囁いた。死者の声はね、耳に聞こえなくとも長きに渡れば心に届く、ジーナに少しずつ刷り込んでいったんだ。それまではねぇ、傷付いても ”マジョリカは悪くない” 、 ”悪いのは好き勝手言う周りの人間だ” と強がっていたけれど、とうとう限界が来て……ヒヒヒ……! 先月、やっとジーナが堕ちてくれたんだよ…ヒヒ』 先月……? それってまさか……! 『先月、お前とジーナはいつも通りにお喋りをして ”また明日” と別れた、その晩の事さ。ジーナの元に片想いの男から電話があったんだ。……ヒヒ……ヒヒヒヒヒ! あの時のジーナ! ヒヒヒヒヒヒヒヒ! 滑稽だった! 電話に出た途端、真っ赤になって部屋ん中ウロウロしだして、可愛い声まで出しちゃってさ! マヌケなジーナはデートの誘いと勘違いして浮かれてた! なのに……その男!  よりによって、マ、マ、マジョリカが好きだから、ヒヒヒヒヒ! ジ、ジーナに! ヒヒ、協力、してくれって、ヒヒヒヒヒ! あの瞬間……ジーナは! ヒヒヒヒヒヒヒ! 固まって、ヒヒh! その場に崩れて! 泣き出して! ……ヒヒィ……ヒッ……ヒヒヒヒヒィィィィ……! 腹が……捩れそうだ……!』 今の話……なにがそんなにおかしいの? おかしい事なんて一つもないのに……! 『ヒヒヒヒ……ヒヒ……ヒh……はぁ……思い出すと笑いが止まらない……! あの時、とうとうジーナは堕ちた。凄かったよ、感情を爆発させて部屋で一人泣き喚いてさ。今まで我慢してきた事もみぃんな思い出して苦しんでた。あたしはこんなチャンスは二度とないと思ったから、仕上げにジーナの耳元で一晩中叫んだんだ。そう、囁いたんじゃなく叫んだ。”思い出せ! 今までマジョリカにされた事を、マジョリカがいるから比べられる、好きな男はみんなマジョリカが好き、マジョリカがいる限りジーナは幸せにはなれない、怒っていいよ、憎んでいいよ、いや憎めっ!” てね』
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