第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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『マージョーリーカー』 …………ッ! 必死になって訴えたけど、その途中で遮られてしまった。 このヒトは、さっきのジーナみたいに間延びでウチを呼んだ、……ああ、そうか。 このヒトだったんだ、さっきの、嫌な感じの呼び方は。 きっとジーナの耳元で、大きな声で叫んでいたんだ。 『はぁぁ…………マジョリカってすごいよね。死んでまでジーナの心配してさ』 ああ……これも、さっきのジーナと同じ言い方だ。 ううん、このヒトの言い方がジーナで再生されてたんだ。 嫌な感じがする……、漠然とした不安感に襲われる。 ウチはこのヒトが次に言う言葉を待っていた。 なんて言うだろう? お願い……なんでも言う事聞くから、だから、ジーナだけは…… 『”ジーナだけは”、って顔してるね。ホント、こんな時までこの調子かよ、マジョリカは。はぁぁぁぁぁ……お前といると自分がいかに汚れた人間かって思い知らされる。 ここまで来ると脅威だ。………………で、マジョリカはジーナを助けたいんだっけ? 身体の乗っ取りをやめてほしいと、』 『…………うん、そうだよ。お願い、ウチ、なんだって言う事聞く。だからお願い……ウチにとってジーナは大切な親友なんだ、』 駄目かもしれない。 それでも頼み込むしか方法がない。 どうかお願い、ジーナをウチから取り上げないで。 …… ………… ……………… 何度目かの沈黙。 やっぱり駄目か……と気持ちが沈みかけた時だった。 目の前のこのヒトは、やっと口を開いてくれて、それで…… 『分かったよ、』 『……え?』 『分かったって言ったの。マジョリカが、どんなにジーナを大事に想っているかって事が。ジーナにあれだけ嫌われてても、そういうのは関係ないんだね。いや……もう、呆れるくらい図々しい、』 『…………ぁ……うん、ず、図々しいよね、ウ、ウチもそう思うよ。その……ごめんなさい……でも……あの……ありがとう……!』 このヒト……視かけは怖いし、嫌な事をたくさん言われたけど、根っからの悪いヒトじゃないのかもしれない。 だって願いを聞いてくれた。 ありがたいよ、これでジーナは乗っ取られなくて済むんだ。 償う方法を早く視つけよう、どうにかしてウチを視てもらって、ウチの声を聞いてもらって、それにはどうしたら____ ドンッ!!! え、と思う時間も無かった。 突然、ウチの背中を誰かが蹴った。 骨が軋み息は止まり、目から火花が出そうな強い衝撃。 ウチの霊体(からだ)は圧倒的な力によって、 ザザーーーーッ!! 地面に霊体(からだ)を擦らせながら、メートル単位で飛ばされたんだ。 『…………痛……』 今……蹴られたよね? 誰に?  誰ってここにはあのヒトしかいなくて、ウチの後ろに回ったし、でも何で蹴るの? 何の為……? 崩れた四つん這い、地面に着けた両腕にはヒリつくような痛みがあった。 肌が擦れて皮が剥けたのかもしれない、……が、その痛みは数秒程で引いていく。 どうして……? 不思議に思って傷を視ようとしたけれど、目が眩しくて開けていられない。 仕方なしに薄目を開けたら、なにこれ……地面がキラキラ光ってる。 金色(こんじき)に、清らかで温かく、霊体(からだ)全体優しい光で包まれる…………ああ……もしかして、ここ……光る道の上なんだ……! ____ガクンッ! 大きな、2度目の衝撃を感じた。 さっきのは背中から、今度のは足の下から突き上げられる感覚だ。 『なに……!?』 足元が安定しない、小刻みにガタガタいってる。 何? 何が起こったの? 状況が分からない、立ってまわりを視ようとしたけど、足元がぐらついておぼつかない、揺れは一層強くなり、気が付けば、光る道は地上を離れ、道ごとどんどん上に上がる。 視上げてたはずの崖が近くなり、届かないはずの木々の葉っぱも近くなり、四つん這いのまま下を覗くと、ジーナもあのヒトも地上に残され、その姿はみるみる小さなっていく…………そして下からは大きな声が、 『よーく分かったよ!! マジョリカが嫌がる事、苦しむ事!! それはジーナと離される事だ!! ジーナを失う事!! 黄泉の国に逝けない事じゃなかったんだなぁ!! じゃあ逝けよ!! そのまま黄泉の国へ!! ジーナはあたしが乗っ取るから!! 手の届かない楽園で、何も出来ない自分を恨んで永遠に苦しむがいい!!』 …………そんな…………!!
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