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『マージョーリーカー』
…………ッ!
必死になって訴えたけど、その途中で遮られてしまった。
このヒトは、さっきのジーナみたいに間延びでウチを呼んだ、……ああ、そうか。
このヒトだったんだ、さっきの、嫌な感じの呼び方は。
きっとジーナの耳元で、大きな声で叫んでいたんだ。
『はぁぁ…………マジョリカってすごいよね。死んでまでジーナの心配してさ』
ああ……これも、さっきのジーナと同じ言い方だ。
ううん、このヒトの言い方がジーナで再生されてたんだ。
嫌な感じがする……、漠然とした不安感に襲われる。
ウチはこのヒトが次に言う言葉を待っていた。
なんて言うだろう?
お願い……なんでも言う事聞くから、だから、ジーナだけは……
『”ジーナだけは”、って顔してるね。ホント、こんな時までこの調子かよ、マジョリカは。はぁぁぁぁぁ……お前といると自分がいかに汚れた人間かって思い知らされる。 ここまで来ると脅威だ。………………で、マジョリカはジーナを助けたいんだっけ? 身体の乗っ取りをやめてほしいと、』
『…………うん、そうだよ。お願い、ウチ、なんだって言う事聞く。だからお願い……ウチにとってジーナは大切な親友なんだ、』
駄目かもしれない。
それでも頼み込むしか方法がない。
どうかお願い、ジーナをウチから取り上げないで。
……
…………
………………
何度目かの沈黙。
やっぱり駄目か……と気持ちが沈みかけた時だった。
目の前のこのヒトは、やっと口を開いてくれて、それで……
『分かったよ、』
『……え?』
『分かったって言ったの。マジョリカが、どんなにジーナを大事に想っているかって事が。ジーナにあれだけ嫌われてても、そういうのは関係ないんだね。いや……もう、呆れるくらい図々しい、』
『…………ぁ……うん、ず、図々しいよね、ウ、ウチもそう思うよ。その……ごめんなさい……でも……あの……ありがとう……!』
このヒト……視かけは怖いし、嫌な事をたくさん言われたけど、根っからの悪いヒトじゃないのかもしれない。
だって願いを聞いてくれた。
ありがたいよ、これでジーナは乗っ取られなくて済むんだ。
償う方法を早く視つけよう、どうにかしてウチを視てもらって、ウチの声を聞いてもらって、それにはどうしたら____
ドンッ!!!
え、と思う時間も無かった。
突然、ウチの背中を誰かが蹴った。
骨が軋み息は止まり、目から火花が出そうな強い衝撃。
ウチの霊体は圧倒的な力によって、
ザザーーーーッ!!
地面に霊体を擦らせながら、メートル単位で飛ばされたんだ。
『…………痛……』
今……蹴られたよね?
誰に?
誰ってここにはあのヒトしかいなくて、ウチの後ろに回ったし、でも何で蹴るの? 何の為……?
崩れた四つん這い、地面に着けた両腕にはヒリつくような痛みがあった。
肌が擦れて皮が剥けたのかもしれない、……が、その痛みは数秒程で引いていく。
どうして……?
不思議に思って傷を視ようとしたけれど、目が眩しくて開けていられない。
仕方なしに薄目を開けたら、なにこれ……地面がキラキラ光ってる。
金色に、清らかで温かく、霊体全体優しい光で包まれる…………ああ……もしかして、ここ……光る道の上なんだ……!
____ガクンッ!
大きな、2度目の衝撃を感じた。
さっきのは背中から、今度のは足の下から突き上げられる感覚だ。
『なに……!?』
足元が安定しない、小刻みにガタガタいってる。
何? 何が起こったの?
状況が分からない、立ってまわりを視ようとしたけど、足元がぐらついておぼつかない、揺れは一層強くなり、気が付けば、光る道は地上を離れ、道ごとどんどん上に上がる。
視上げてたはずの崖が近くなり、届かないはずの木々の葉っぱも近くなり、四つん這いのまま下を覗くと、ジーナもあのヒトも地上に残され、その姿はみるみる小さなっていく…………そして下からは大きな声が、
『よーく分かったよ!! マジョリカが嫌がる事、苦しむ事!! それはジーナと離される事だ!! ジーナを失う事!! 黄泉の国に逝けない事じゃなかったんだなぁ!! じゃあ逝けよ!! そのまま黄泉の国へ!! ジーナはあたしが乗っ取るから!! 手の届かない楽園で、何も出来ない自分を恨んで永遠に苦しむがいい!!』
…………そんな…………!!
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