第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

189/285

2364人が本棚に入れています
本棚に追加
/2550ページ
『ジーナッ! ジーナ、ジーナ、ジーナーーッ!!』 声の限りに幼馴染の名前を呼んだ。 光る道から身を乗り出して、遠くなってくジーナの姿を泣きながら視続けたけど、あっという間に小さくなって、人の形が豆粒へと変わった直後、地上は雲に隠された。 ジーナ…………! ああ……どうしよう、ジーナの事を考えると心臓が潰れてしまいそうだった。 肉の塊……あのヒトはジーナを乗っ取る気でいる。 そんな事、させたくないよ。 ジーナの身体はジーナのもので、ジーナの人生もジーナのものだもの。 勝手に奪って良いはずがない、許されるはずがない、なのに、あのヒトはそうしようとしてるんだ。 こしてる間にも、刻一刻と危機が迫る。 助けに行きたい、ジーナを守りたい……けど、それにはどうしたら良いんだろう。 光る道はいまだ速度を落とさずに、上へ上へと昇っていた。 改めて下を視れば、薄い雲の隙間から航空写真に似たものが視える……相当な高さだ、それでもやっぱり助けに行きたいよ。 うん……そうだ、戻ろう。 ならどうやって戻ろうか。 ここには当然、ハシゴもなければ階段もない。 地上に戻る手段がない。 となると、いっそのこと、(ここ)から地上(した)に飛び降りようかと考えた。 単純すぎる案だけど、それくらいしか浮かばない。 怖いけど、足がすくんでしまうけど、きっと……大丈夫。 だってウチは幽霊だもの。 飛び降りたってこれ以上死にはしない。 よし……行こう。 覚悟を決めて、ウチは道のギリギリ端に立った。 あとは足を一歩、前に出すだけの単純な動作。 …… ………… ……………… そう、それはとっても単純な動作なんだ。 それなのに、そのはずなのに、足がガタガタ震えてしまって、うまく足が動かせない。 『ああもう……! お願い、動いてよ』 両手で足を叩いてみても、まったく霊体(からだ)は動いてくれなかった。 もう……どうして!? ジーナを助けに行きたいのに、その気持ちは確かなのに……ウチは弱虫だ。 情けなくて涙が溢れて、その場にしゃがんだ、感情が昂って立っていられなかったんだ。 どのくらいそうしてたのか。 泣いて泣いて泣き疲れて、ようやく顔を上げた時。 ウチは思わず悲鳴を上げた。 だって……そこは……宇宙のど真ん中だったんだもの。
/2550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2364人が本棚に入れています
本棚に追加