第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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飛び出た悲鳴を口ごと両手で覆って止めた。 そうしないとパニックになりそうで……ううん、違うか、ウチはもうパニックだ。 なにがどうしてどうなったらこうなるの? どうしてウチは宇宙にいるの? どうして宇宙で呼吸が出来るの? どうして宇宙で重力が働いてるの? どうして? なんで? ウチが幽霊だから? 幽霊なら訓練なしで宇宙に来れるの? 宇宙服も着ないで? 泥だらけの制服で? なんで? どうして?  まさかこの宇宙が、……黄泉の国という所なの? 分からない、ぜんぜん分からない。 いろんな事がありすぎて、理解が全然追いつかない。 頭の中では次から次へと疑問が湧いて、なのに答えは視つからなくて、ジーナの事も心配で、それなのに何もかもが手に負えなくて、どうして良いか、どうするべきか、まずは何をしたらいいのか、そういうの全部、分からなくてもウチが決めなきゃ、考えて、決断して、行動に移すの、勇気を出して、ウチが、1人で、そういうのぜんぶ、ウチ独りで、たった独りで……ああ……………………そんなの……むりだよ、 『…………うぅ……うぅぅ……無理……こんな所で……何していいか……わかんないよ……も……無理……もお、わからないよぉ……』 限界だった。 ジーナの事、”あのヒト” の事、ウチが幽霊になった事。 いろんな事がいっぺんにありすぎて、あった直後は気が張り詰めて、だけど突然宇宙に独り、強すぎるストレスに頭も心も付いてこない。 それでもジーナを助けたいから、しっかりしなくちゃ、なんとかしなくちゃ、そればっかり思っていたら、糸がプッツリ切れてしまった。 もう限界です、もう駄目です、もう無理です、 ごめんなさい、本当にごめんなさい、 ジーナごめんね、助けに行きたい、償いたい、そう思うのにウチの心は折れてしまった。 心が折れて、ウチの胸には大きな穴がぽっかり開いた。 洞窟みたいなその穴は、いくら向こうを覗いてみてもウチの未来は映らない。 映るのは、宇宙に広がる瞬く星の数々で、それはとっても綺麗だけれど、ひどく冷たくよそよそしい。 そして、いつの間に止まったのか。 ウチを乗せる光る道は上昇が止まり、静かに、ただ真っすぐに伸びていた。 終点は分からないけど、星の海の遥か彼方遠くまで、小さくなって視えなくなるまで。 この時だった……突然、実感が沸いたんだ。 ウチ以外に誰もいない、冷たい宇宙に独りきり。 余計なものがないせいなのか、自分が死んだという自覚が怖いくらい湧き上がってきた。 もうパパとママに会えないんだ……お別れも言えてない。 2人共きっと泣いちゃうんだろうな、ごめんね、親不孝してごめんなさい。 ああ……それだけじゃないや。 行きたい大学があったのに、将来の夢もあったのに、いつか誰かと恋をして結婚だってしたかったのに、そういうの、ぜんぶ叶わなくなるんだ。 こんなことならもっと一生懸命生きれば良かったな。 ウチはまだ17才で、ウチにはこれからたくさんの時間があると思っていた。 だから、のんびりしてたんだ。 ジーナとおしゃべりして、他の友達とも遊んで、毎日のんきに過ごしてた。 時間はこうして、突然終わる事があるなんて想像すらしていなかった。 …… …………辛いよ、
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