第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

191/285

2364人が本棚に入れています
本棚に追加
/2550ページ
霊体(からだ)に力が入らない、涙が溢れて止まらない。 辛くて、苦しくて、悔しくて、そして怖くてたまらない。 ウチは命を失った。 その実感が突然湧いて、途端、色んな事が頭に浮かんだ。 パパやママの事、あるはずだった未来、ジーナや友達との何気ない日常。 二度とそこに戻る事は出来ない。 そう……失ったのは命だけじゃないんだよ。 こういうさ、ウチにとって大事な人達と大事な毎日も、ぜんぶいっぺんに失ったんだ。 それに気が付いた時、とてつもなく怖くなった。 ウチは死んで、気付けば宇宙のど真ん中。 右を視ても左を視ても、どこを視たって星の海が広がるだけで、ウチ以外に誰もいない。 誰の声も気配もない、怖いくらいの静寂に気が狂いそうになった。 耐えきれない恐怖に悲鳴を上げた。 金切声で、『誰かいませんか!?』とも言ってみた。 でも、それに答えてくれる人はいなくって、 ウチが黙ればまた静寂が戻るんだ。 『……も……やだ……誰か……いませんか……? パパ……ママ……ジーナ……』 縋る思いで呟いた、呟かずにはいられなかった。 誰でも良い、知らない人でもいいから返事して、そう強く願うのに、その願いは叶わない。 静かすぎて耳鳴りがする、パニックが加速する、ちょっとの刺激で本当に狂ってしまいそう。
/2550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2364人が本棚に入れています
本棚に追加