第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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ジーナ……ジーナごめんね。 ずっと一緒に笑ってたかった、なのにごめんね、ウチのせいで、…… ……はぁはぁ……なんだろ……息が……出来ない、うまく吸えない、頭の中に溢れる辛さが収まり切れずに霊体(からだ)の中まで流れ出しそれが喉を塞ぐんだ苦しいよ塞がれて息が…………も……だめ……でも……いいや……もうこのまま……意識を無くして……目が覚めなければいい、 浅い呼吸、酷い耳鳴り、滲む視界、 意識が途切れるのを心待ちにしていると…………あれは……なに……? 視界のうんと先、一際輝く光るモノが視えた、 涙で滲んでいるけれど、それは徐々に大きくなって…… 流れ星……? と思った、 地上(した)から視るのと全然違う、宇宙(ここ)からだと眩しいくらいの強い光とスピードで、ウチに向かって飛んでくる、 道の上を逆走して来るように、真っすぐに、ブレる事なく、どんどん近くなってきて、もう、すぐそこまで、ウチの傍まで……………………ぶつかるっ! 思わず目を閉じた。 流れ星がウチに向かって飛んできて、止まることなく速度も落とさず、激突するかと思って、それが怖くて目を閉じたんだ。 それからすぐの事だった。 流れ星は逸れたのか、ぶつかりはしなかったけど、驚いて頭を抱えて目を閉じて、それで、座り込むウチの上から聞こえてきたの。 それはとっても綺麗な声。 ガラス細工の鈴の()みたいに繊細で、優しくて、それでいて力強い。 『マジョリカ・ビアンコさん? ……良かった……! 視つかった……! ああ……こんなに泣いて……独りで怖かったわね、よく頑張ったわね、遅くなってごめんなさい、もう大丈夫よ』 え………………誰……? 恐る恐る顔を上げれば、そこには人が立っていた。 筋肉質で身体の大きい、黒のタンクトップに迷彩柄のパンツを履いた、とても綺麗な女の人。 こんな所に……人……? 不思議に思った、だけどそんなのどうでも良いとも思った。 ウチ以外に人がいて、その人が来てくれて、『もう大丈夫』と言ってくれたんだ。 嬉しくてたまらなかった。 優しい笑顔に力が抜けて、ほっとしたら今さら霊体(からだ)が震えてきた。 名前も知らないその人は、そんな様子に気が付いたのか、傍に寄って膝を着き、両手を広げた次の瞬間、ギュッとウチを抱きしめた。 あ……と思った。 腕の中は逞しくって、震えが止まるほど温かい。 そう、すごくすごく温かかったんだ。
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