第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

194/285

2364人が本棚に入れています
本棚に追加
/2550ページ
『無事で良かったわ。道の ”緊急システム” が発動したから、何か良くない事が起きたんだと思って……それで私、心配で走って来たのよ』 そう言って息を漏らした女の人は、名前を白雪さんだと教えてくれた。 白雪さんは光る道を真っすぐ逝った終点。 死者達の楽園、”黄泉の国” から来たのだと言う。 宇宙(ここ)で伸びる光る道は本来、死者を黄泉まで導くもので、通常はキラキラ輝きほんのりと温かく、死者の意思で、死者のタイミングで、ゆっくりのんびり宇宙を眺め、楽しみながら逝けるよう、散歩のように歩けるよう、ただただ静かに伸びるものなのだそうだ。 それが今回、ウチを乗せた光る道がガタガタ激しく揺れながら、一気に宇宙(うえ)まで上昇したのは、早急に地上を、現世を、離れなくてはならない緊急事態が起きたから、という事らしいのだけど……それっておそらく肉の塊…… ”あのヒト” が関係してるんだ。 『マジョリカさん、現世でなにがあったの?』 聞かれたウチは、ジーナの事、”あのヒト” の事、そしてウチの事、そういうの全部、つっかえながらも話したの。 思い出せば辛さも怖さも生々しくて、我慢が出来ずに途中で泣いて、それでも、白雪さんは辛抱強く聞いてくれた。 急かすこともしないで、ウチが泣けばそのたびギュッと抱きしめて、『だいじょうぶよ、ゆっくり、ゆっくりね』と、優しく背中をさすってくれたんだ。
/2550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2364人が本棚に入れています
本棚に追加