第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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ぜんぶを話終えた時、もう何度目だろう? 白雪さんは再びウチを抱きしめた。 さっきよりも力が強く、隙間がないほどくっついて『怖かったわね、悲しかったわね』そう言いながらウチの背中をさすったの。 それでそのあと、霊体(からだ)を離した白雪さんは、急に何かを思い出したようにおもむろと、迷彩柄のパンツのポケット、そこからキャップを取り出してウチの頭に乗せたんだ。 そして…… 『やだ……可愛い! あ、いきなりごめんなさい。でもやっぱりね、似合うんじゃないかと思ったの』 白雪さんはニコニコ笑い、まるで子供にそうするみたいに、キャップの上からウチの頭をワシワシ撫でた。 あ……これって気遣ってくれたんだろうな。 さっきウチが、髪を切られて悲しかったと泣いたから、こんな頭じゃ恥ずかしいと俯いたから。 白雪さんはそんなウチを気にかけて、だからと言って、”このキャップで隠しなさい” 、ではなく、 ”そんな頭じゃかわいそう” 、でもなく、”やだ、可愛い” と明るく言ってくれたんだ。 なんだろ……気持ちがすごく嬉しくて、白雪さんに救われる。 さっきまでの辛い気持ちが薄れていく。 『マジョリカさん、辛いのに話してくれてありがとう。大体の事情は分かったわ。となると……ジーナさんが心配ね』 白雪さんはそう言うと腕を組んでしばらく考え、そして、宙を指で叩くような、そんな仕草を数回したの。 その直後。 突然、学校の黒板よりももっと大きい、半透明の、モニター……? みたいなモノが現れたんだ。 それはふわりと宙に浮き、ノイズがチカチカ横向きに走ってる。 なにこれ……? なんでこんなモノが出てきたの? というかどうやって出したの?  出したのは白雪さん……だよね? これはなに? なにに使うの? どういう事なの? 頭の中はたくさんのクエスチョンでいっぱいだった。 白雪さんに聞いてみようかな……と思ったけど、彼女は何やら忙しそうで、なんとなく話かけにくい。 とりあえず、ジャマをしないように、そっと後ろで眺めていた。 きっと大人しく待ってれば、あとから何をしてるか教えてくれるかも……と、思ったその時だった。 ブンッと短い音がした。 音のすぐ後、モニターのノイズが消えた。 代わり、そこに知った顔が映り込む。 …… …………え、 ちょっと……この映像って……! 『ジーナ!』 そこには大好きなジーナが映っていた。 地上の崖の下、泣きながら地面に蹲る幼馴染。 そのジーナの後ろには、肉の塊…… ”あのヒト” がぴったりと張り付いていた。
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