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『やだっ、ごめんなさい! 泣かせるつもりで言ったんじゃないの!』
涙が止まらず俯いてると、慌てたような大きな声が頭の上から降ってきた。
え……と思って顔を上げれば白雪さんと目が合って、ウチの涙を両手を使って拭ってくれた。
『……ありがとございます……それと……ウチ、泣いてばっかりでごめんなさい』
なんとか言えた。
優しくされたら余計に涙が溢れてしまって、声はおかしいくらいに震えてる。
やだな、恥ずかしいよ、これからジーナを助けに行くのに、こんなんじゃ止められて当たり前だ。
『ううん、いいの。私こそごめんなさい。今の言い方はちょっとキツかったわね。あなたにとってジーナさんは大切な親友だもの、助けに行きたいという気持ちはよく分かるわ。でもね、行かせる訳にはいかないの』
優しい顔から一変。
さっき視た厳しい顔に戻ってしまった。
『で、でも……!』
反論しかけたウチの手首を掴みなおして、白雪さんは首を横に大きく振った。
『駄目よ。言ったでしょう? あの手の悪霊は厄介なのよ。性質も悪いし中途半端に霊力を持ってる。あなたが行ったら危険なの。ジーナさんを助けるどころか返り討ちに遭ってしまうわ』
『そ、そうかもしれない、でも……でも……だからと言って放っておけないよ! 放っておいたら乗っ取られちゃう、ジーナがジーナでなくなっちゃう! ……お願い行かせて! ウチはいいの、だってもう死んじゃったから! でもねジーナは生きてる! だから、だから……助けたいよ!』
心臓がバクバクいってる。
白雪さんは意地悪でウチを止めてるんじゃない、心配してくれてるの。
なのに反論ばっかりだ。
ごめんなさい、でも行かせて、お願いだから手を離して。
ドキドキしながら白雪さんと目を合わせ、お互い引かずに黙ってしまった____
____それから少しの時間が経って、
白雪さんの方から先に沈黙を壊したの。
『マジョリカさん、』
静かな声でウチを呼んだ、と思ったら……どうしたの?
そこで言葉を止めてしまった。
待ってもぜんぜん話してくれずに再びの沈黙……なんだけど、さっきのとは様子が違う。
白雪さんは大きな霊体をうんと屈めてウチの顔をジッと視た。
それはとっても近くって、思わず顔が赤くなる。
な、なに……? ウチの顔、何かついてる……?
『マジョリカさん、…………私ね、昔……生きてた頃。親友がいたの。あなたにとってのジーナさんと同じくらい大事な子。大好きだった。綺麗で、思いやりがあって優しくて。……そう、マジョリカさんにとてもよく似てるの。もしかしたら彼女の生まれ変わりなんじゃないかと思うくらい』
白雪さん……?
急にどうしたんだろう……
『その子もね、マジョリカさんと同じような事があったのよ。ある事情から、大事な家族が危険になったピンチの時、彼女は迷わず助けに行こうとしたわ。力なんかないのに、行けば彼女も危険なのに、それでも行こうとしたの。あの時も私、今日みたいに止めたのよ。あなたが行っても助ける事は出来ないわって』
そうなんだ……でも、本当にどうしたの?
なぜ今その話をするの……?
そんな気持ちが顔に出たのか、白雪さんは少し慌ててこう言った。
『…………あぁ、ごめんなさい。こんな話をしてる場合じゃないのに。マジョリカさんを視てたら思い出してしまったの。あの時の再現みたいで懐かしい気持ちになったわ。もしかしたら、これもなにかの縁なのかも……だからねマジョリカさん。いきなりだけど……もし良かったら私と友達になってくれない?』
え……?
本当にいきなりだ。
もう、何がなんだか分からないよ。
でも……お友達の事を話す白雪さんの顔が、さっきからとても淋しそうなんだ。
なにか事情があるのかもしれないな。
『…………い、いいですよ。ウチなんかで良かったら』
声は小さくなっちゃったけど、そう答えたら白雪さんは嬉しそうに笑ったの。
そして、
『ありがとう、嬉しいわ。いきなりこんな事を言われて、びっくりしたでしょうに……それでも受け入れてくれるなんてマジョリカさんは優しい子ね。本当……ふふふ……シンちゃんにそっくりだわ。
それじゃあ友達になった記念にひとつ、良い事を教えてあげる。
いい? よく聞いて。マジョリカさんがピンチの時、だけどどんなに頑張ってもどうしようもない時はね、無理をしないで友達に頼ればいいの。ただ一言、私に『助けて』と言えばいいんだわ。
あなたじゃ手に負えない悪霊は、私が行ってどうにかしてくる! だって私は友達だから!』
★白雪ちゃんが生者の頃、親友とのやり取りがココです。※『あの女は不死身の化け物か!?』に飛びます。
https://estar.jp/novels/24620897/viewer?page=61&preview=1
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