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白雪さんは声を大にそう言うと、大きな霊体をあっちに捻りこっちに捻りとストレッチを始めたの。
両肩をグルグル回し、首も腰も、手首も足首も、全身くまなく動かした。
時間にしたら1分もかかってない。
慣れた動作でストレッチを終わらすと、その場で小さく数回ジャンプ。
霊体の力は抜けてるようで、軽い感じに1回、2回、3回、4回。
5回目でウチと目が合い、ニコッと笑った次の瞬間、風を切るよなハイキックを視せたんだ。
『…………………………』
今の……なに……?
急のコトで声が出ない、もちろんウチに当たってない、でも、……びっくりした……ウチ……格闘技とかよく分からないけど、今のはおふざけとか、なにかの真似事とか、そんなんじゃない。
たぶんだけど実戦向けのキックだ……白雪さん、なんでこんな事が出来るの……?
聞いてみたい……けど、びっくりしすぎで言葉が出ずに固まってると、焦った顔の白雪さんが言ったんだ。
『やだっ、ごめんなさい! マジョリカさんを怖がらせるつもりはなかったのよ! ただ、現場は久しぶりだから準備運動のつもりだったの』
現場……?
なんの事だろうと思ったけど、あまりに焦る白雪さんにウチは少し笑ってしまった。
『ぷ……あ、笑ってごめんなさい。準備体操にハイキックって聞かないなぁと思って。でも大丈夫です、怖くはないですよ。ちょっとびっくりしただけです。……それで、その、さっき白雪さんが言ってた事なんですけど……”友達に頼れば良い” って、』
そう、この事を言わなくちゃと思ってたんだ。
ストレッチからのハイキックに驚いて、タイミングを逃してしまった。
『ああ、その事ね。大丈夫よ、私に任せといて。マジョリカさんの代わりに行ってくるわ。かならずジーナさんを助けるから、あなたは光る道で待っていて』
『あ、あの! 私こそ待って! ……その、ありがたいと思うけど、やっぱり駄目です。だってこれはウチの問題だもの。気持ちは嬉しいけど、これで白雪さんに何かあったら、ウチ、どうして良いか分からないよ』
そうだ、本当にどうしていいか分からないし、もう嫌なんだ。
ウチのせいで誰かが傷付くのが耐えられない。
ジーナをあんなに苦しめた、ぜんぶぜんぶウチのせいだもの。
『マジョリカさん……ありがとう。心配してくれるのね。でもね、大丈夫よ。だって私は……』
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