第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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言葉が出なかった。 正直、今の話の半分も分からない。 ”魂” という言葉は知っているけど、それは昔、本や映画で知ったくらいの不確かな薄い知識、実物を視た事もない。 でも、ひとつだけ分かった事がある。 肉の塊、”あのヒト” がしようとしようとしてるのは、とてつもなく身勝手で、浅はかで、本人すら分かっていない無意味な事なんだ。 ____そして最後はぐちゃぐちゃに混ざり合う、 ____その結果、両者共に自我を失くして……消滅してしまうの、 ”あのヒト” が実行すればジーナの人格も身体も、その両方が消滅する。 嫌……そんな最期にさせたくないよ……ジーナは幸せになるんだもの……だから助けたい、ウチが行って、アイツをやっつけて、……ああ、でもそうだ、白雪さんの言う通り、ウチじゃ無理だ……助けられないよ、ジーナを救うには、確実に救うには____ 『し、白雪さん……ウチ……勝手でごめんなさい……やっぱりウチじゃ駄目なんだ、たすけてください……お願い……! ジーナを助けて!』 涙が溢れる。 縋る思いで視上げると、力強い笑顔がそこにあった。 そして、 『うん! 任せて、行ってくる!』 白雪さんは短く言うと、ブンッと鈍い音だけ残して、その姿を消した。 『し、白雪さん!?』 いなくなっちゃった……ど、どこに行ったの? 前を視ても後ろを視ても、どこにもいない。 ここは大きな一本道で隠れる場所はひとつもないの、……にも関わらず、煙のように消えたんだ。 1人になって嫌でも戻る静寂に、心臓が痛いくらいに暴れ出す。 広い宇宙(そら)に目線を移せば、うんと遠くにサファイアみたいな地球が視えた。 綺麗だけれど距離がある、それはなんだか漠然と、胸がざわつく不安に駆られる。 ウチ以外に誰もいない。 白雪さん、なにかあったのかな……? そうでなければ、いきなり消えるなんておかしいよね。 まさか……肉の塊 “あのヒト” が何かをしたとか……どうしよう……だとすればウチのせいだ……! 冷たい汗が背中を伝う、居ても立っても居られない。 ウチはとにかく地上に行こうと思ったの、白雪さんを探しに、ジーナを助けに。 非力だけど、宇宙(ここ)にいるよりマシだと思って走り出そうとした時だった。 斜め後ろ、そこから声が聞こえてきたの。 【お前は誰だ!?】 え……? これって “あのヒト” の声だ……! 伝う汗が滝に変わる。 まさかここまで来たのかと、恐る恐る振り向けば、 【ジーナさんから離れなさい、】 淡々と、だけど強い怒気を含んだ声も聞こえたんだ。 『…………! これって……』 そこにあったのは白雪さんが出現させた、黒板くらいのモニターだった。 大きな画面には地上の様子が映っていた。 “あのヒト”と白雪さんが……睨み合っている。
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