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言葉が出なかった。
正直、今の話の半分も分からない。
”魂” という言葉は知っているけど、それは昔、本や映画で知ったくらいの不確かな薄い知識、実物を視た事もない。
でも、ひとつだけ分かった事がある。
肉の塊、”あのヒト” がしようとしようとしてるのは、とてつもなく身勝手で、浅はかで、本人すら分かっていない無意味な事なんだ。
____そして最後はぐちゃぐちゃに混ざり合う、
____その結果、両者共に自我を失くして……消滅してしまうの、
”あのヒト” が実行すればジーナの人格も身体も、その両方が消滅する。
嫌……そんな最期にさせたくないよ……ジーナは幸せになるんだもの……だから助けたい、ウチが行って、アイツをやっつけて、……ああ、でもそうだ、白雪さんの言う通り、ウチじゃ無理だ……助けられないよ、ジーナを救うには、確実に救うには____
『し、白雪さん……ウチ……勝手でごめんなさい……やっぱりウチじゃ駄目なんだ、たすけてください……お願い……! ジーナを助けて!』
涙が溢れる。
縋る思いで視上げると、力強い笑顔がそこにあった。
そして、
『うん! 任せて、行ってくる!』
白雪さんは短く言うと、ブンッと鈍い音だけ残して、その姿を消した。
『し、白雪さん!?』
いなくなっちゃった……ど、どこに行ったの?
前を視ても後ろを視ても、どこにもいない。
ここは大きな一本道で隠れる場所はひとつもないの、……にも関わらず、煙のように消えたんだ。
1人になって嫌でも戻る静寂に、心臓が痛いくらいに暴れ出す。
広い宇宙に目線を移せば、うんと遠くにサファイアみたいな地球が視えた。
綺麗だけれど距離がある、それはなんだか漠然と、胸がざわつく不安に駆られる。
ウチ以外に誰もいない。
白雪さん、なにかあったのかな……?
そうでなければ、いきなり消えるなんておかしいよね。
まさか……肉の塊 “あのヒト” が何かをしたとか……どうしよう……だとすればウチのせいだ……!
冷たい汗が背中を伝う、居ても立っても居られない。
ウチはとにかく地上に行こうと思ったの、白雪さんを探しに、ジーナを助けに。
非力だけど、宇宙にいるよりマシだと思って走り出そうとした時だった。
斜め後ろ、そこから声が聞こえてきたの。
【お前は誰だ!?】
え……?
これって “あのヒト” の声だ……!
伝う汗が滝に変わる。
まさかここまで来たのかと、恐る恐る振り向けば、
【ジーナさんから離れなさい、】
淡々と、だけど強い怒気を含んだ声も聞こえたんだ。
『…………! これって……』
そこにあったのは白雪さんが出現させた、黒板くらいのモニターだった。
大きな画面には地上の様子が映っていた。
“あのヒト”と白雪さんが……睨み合っている。
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