第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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モニター(ここ)に映ってるのは白雪さんと “あのヒト” だ。 睨み合う2人の後ろ。 少し離れた所ではジーナが地面で泣いているから、そこが地上である事は間違いない。 白雪さん、一体どうやって移動したんだろう? ”行ってくる” と笑った直後に姿が消えて、今は地上にいるなんて……信じられない、こんなのまるで瞬間移動だ。 どういう事か、それはもちろん気になるけども、とりあえず後回し。 白雪さんの前に立つ、“あのヒト” が話し出したんだ。 【ジーナから離れろ? はぁ? なんであたしが見ず知らずのあんたの指図を受けなきゃならないの? 聞く訳ないだろ】 半分バカにしたような、呆れたような話し方。 とてつもなく感じが悪い。 それを聞いた白雪さんは動揺する事もなく、あえてなのか抑揚を一切つけずにこう言った。 【見ず知らずの人間の話は聞けないと、そうですか。では名乗りましょう。私の名前は白雪。黄泉の国、”光道開通部(こうどうかいつうぶ)” 所属、そこでは(おさ)を務めています】 コウドウカイツウブ……って、なに……? よく分からないけど。(おさ)というのは偉い(ひと)って……事? 【コウドウ……? ああ……光道(こうどう)って事か。前に聞いた事があるよ。となると……チッ、あんたが伸ばしているのか。”光る道” と、それから……あの忌々しい”闇の道” も……!】 “あのヒト” は後半、乱杭歯をガチガチ鳴らして大声を上げた。 ウチはモニター越しでも怖いと思う……が、それでも動じない白雪さんは、真正面から言い返す。 【よくご存知ね。あなたの言う通りよ。私達 ”光道開通部(こうどうかいつうぶ)” は光と闇、2つの道のいずれかを現世に伸ばします。善の霊には光の道を、悪の霊には闇の道を。…………あなたの元には一体どちらの道が来たのかしら、私に教えてくださる?】   声の終わりに乾いた音が重なった。 白雪さんは左の足を一歩前に、土の大地が抉れるほどに擦り出した。 …… ………… ……………… その顔に表情はなく、綺麗な両目はひどく冷たい色を視せていた。
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