第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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今、白雪さんが言った事。 ”他人の光る道を奪う” とはどういう意味なの? よく分からないけど、それが原因であの姿になったと言うの……? 白雪さんは厳しい顔で、“あのヒト” の顔を、身体を、全体を視て、小さなため息をついた。 【あなたの霊体(からだ)。皮膚は焼けて赤黒く、歪な瘤に覆われて、薄い粘液に塗れてる。目も鼻も口も破壊されて手足の長さも不揃いに、そして頭部は取れかけたのか極端な左寄り……酷い崩れ方だわ。でもね、これは典型的な崩れ方よ】 【……………………】 【やはりそうなのね。現世地上に伸び降りた誰かの為の光る道。その道にあなた、当人を押しのけて自分が乗ろうとしたのでしょう? 資格も無いのに黄泉へ逝こうと試みた、違うかしら】 【……それは………】 【無駄な事を……光る道はただの道ではない。正しく生きた善霊達を、黄泉の国まで安全かつ確実に導く為の道なのよ。そこに悪しき(もの)が近づけば、ましてや道に乗ろうとすれば全力で拒否をする。不正者を排除しようと焼き尽くそうとするわ。あたなも焼かれたのでしょう?】 【……あたしは……】 【これまでに、あなたのような(ひと)をたくさん視てきたわ。身勝手で、傲慢で、自分が一番で、誰かの積み重ねた善行を、誰かの地道な努力の成果を、 ”ずるい” とか ”不公平” とか難癖をつけて、誰かの大事な物を簡単に奪おうとする、…………あなたがそういう姿になったのは、マジョリカさんのせいじゃない。あなた自身が原因よ】 【……………………】 【あなた、こうも言ってたわよね。”マジョリカは努力をしない、顔だけだ” と。これも違う。私は彼女の生きてきた ”17年間の調査書” を読んだわ。そこにはあらゆる努力の積み重ねが載っていた。本来彼女は決して器用な方ではない。どちらかと言えば不器用よ。それでも、その不器用さをカバーするにはどうしたら良いかを自分で考え、失敗しながら努力を重ねてきたの。あなたが言うような、泣いてまわりに助けてもらおうなんてしていない。 本当に努力をしていないのは、身勝手な考えで他人の物を簡単に奪おうとする……あなたの方じゃなくて?】
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