第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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今の話……ウチはもう頭の中がパンパンだった。 “あのヒト” が他の誰かの光る道を奪おうとしたとか、そのせいで身体を焼かれたとか……ウチにとってあまりにも非現実的で、聞いてて怖くてたまらなかった。 同時、だからだったんだ……とも思った。 さっきウチが、”黄泉の国に逝くよりもジーナの傍にいたい” と言った時。 “あのヒト” は、ウチの背中を強く蹴って光の道に乗せたんだ。 なんであんなに乱暴な方法で乗せたのか、今ようやく分かった。 きっと、近寄りたくなかったんだ。 近寄れば、道はまた “あのヒト” を焼くはずだから____ そんな事を考えながらモニターを視続けていた。 画面の向こうの “あのヒト” は、よほど痛い所を突かれたのだろう。 顔を歪めて地団駄を踏みながら、割れるほどの大声をあげたんだ。 【うぁぁああああ!! うるさいっ!! るさいうるさいうるさいっ!! 知ったような口をきくな!! 此処は黄泉じゃない、現世だ!! 他人(ひと)から奪って何が悪い!! おまえに教えてやる!! 現世はね ”正しい者” より ”うまくやった者” が勝つんだよ!!】 【違う!!】 【違わない!! 欲しいモノは弱いヤツから騙えばいい!! 気に入らないヤツは殺せばいい!!】 【違う!!】 【違わない!! あたしはずっとそうしてきた!! それでうまくいっていた!! なのに……忌々しい!! 光る道に霊体(からだ)を焼かれておかしくなったんだ!! 痛かった……熱かった……苦しかった……こんな姿になって辛かった……!! だから、】 と、言葉を止めた “あのヒト” は、耳まで裂ける大きな口を三日月型に歪ませた。
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