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……
…………
………………待って、
ちょっと待ってよ。
____だってあたしは悪霊だから、
“あのヒト” はそう言った。
それと、”仕方がないだろ” とも。
なにを……言ってるの?
理解するのに数秒かかった。
少し遅れて理解をすれば、ウチの視界はグラリと揺れた。
一気に涙が溢れ出る、船酔いみたいな気持ちの悪さに襲われる。
それらすべてがウチの中で混ざり合い、頭の中が痺れるくらいの激しい怒りが込み上げた。
本当に何を言ってるの?
ジーナを洗脳したくせに、
乗っ取ろうとしたくせに、
ウチの髪を切ったくせに、
ウチの命を奪ったくせに、
あんな事をしておいて、
取り返しのつかない事をしておいて、
”仕方がない” で済ましてしまうの?
たったそれだけで終わらすの?
ふざけないで、軽々しく言わないで。
ウチもジーナも、あんたのオモチャじゃない……!
地上を映すモニターが、怒りで真っ赤に染まって視える。
その画面の向こうでは、白雪さんが押し黙り、アイツは俯いて、ジーナの泣き声だけが聞こえていた。
【今言った通りだよ。あたしはきっと勝手な事を言ってるし、自分でもそう思う。今日でいよいよ消えるのかと思ったら、色々考えてしまってね。それで……白雪、もうひとつ頼みがあるんだ。最後に少しだけ、ジーナの傍に行かせてほしい】
ジーナの傍……?
『だ、駄目よ! そんなの絶対駄目!
何か企んでる! 白雪さん、”うん” と言わないで、ジーナに近寄らせないで!』
モニターに縋りついて大声を上げた。
声が届かないのは分かってる、だけど叫ばずにはいられない……!
お願い……白雪さん、気付いて、絶対何か企んでる……!
【なぜ傍に? 必要ないはずよ。お別れがしたいなら此処からなさい】
【……あぁ、そうか。信用出来ないか、そうだよな。だけど……そこをなんとか行かせてくれないか? もちろん悪い事はしない、近くで顔が視たいのと、長年の洗脳をときたいだけだ。この10年、あたしはジーナにずっと囁いてきた。マジョリカを憎め、マジョリカに酷い事をしろってね。もうマジョリカはいないけど、この先悪影響があるかもしれない。だから最後、ささやかな罪滅ぼしをさせてくれ、】
駄目よ!
絶対駄目、お願い断って、信用出来ない、嫌な予感がするの、白雪さん、お願い、お願い、お願いだから駄目だと言って!
祈る想いで2人を視てた。
だけど、ウチの祈りは地上には届かなくって、白雪さんは探る目をしてアイツの視つめ、そしてこう答えてしまった。
【信用して良いのね? ……分かりました、許可しましょう。その代わり私も一緒に行くわ。もし、あなたが少しでも変な動きをしたら……直ちに滅します、】
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