第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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【長い時間はあげられない】 白雪さんが低い声で念を押す。 アイツの隣にピタリとついて、瞬きすらせずジッと視る。 今の所、アイツにおかしな動きはない。 ”せめて最後に償いたい” と、”終われば後は悔いは無い” と、そればかりを繰り返す、…………弱々しいあの態度。 もしかして、本当に償いたいと思ってるのかな……? そんな風にも見えるけど確信はない。 だからやっぱり心配になる。 嫌な予感が止まらない。 歩いて十数歩。 とうとうアイツは泣いてるジーナの後ろに立った。 傍に立つ白雪さんは、 【悪いけど、両手は拘束させてもらうわ】 言いながらアイツの腕を後ろに回すと、自らの手でガッチリ掴む。 アイツの身体も大きいけれど、白雪さんはその比じゃない。 あんな風に掴まれてしまったら、動く事すら出来ないはずだ。 あれなら……心配ないかもしれない。 白雪さんに拘束されてもされるがまま、文句のひとつを言う訳でない。 そんなアイツは白雪さんに一声かけると、腰を屈めてジーナを覗いた。 そして、 【……ジーナ……ジーナ……聞こえる……? あたしだよ、】 耳元に口を寄せると小さな声で囁いた……が、ジーナに変化は見られない。 【ジーナ……ジーナ、可哀そうに、辛いんだろう? どうしていいか分からないんだろう? 大丈夫、教えてあげる、あたしの声を聞きな、いつもみたく何も考えずに意思を捨てな、】 最後の言葉が引っ掛かる……が、ここでジーナに変化があった。 虚ろな目が地面を視つめ、瞳が細かく左右に揺れる。 そして涙と嗚咽が同時に止まる。 …… ………… なんだろう、不安感が強まって心臓が早くなる。 ジーナの様子がおかしいのは洗脳が解かれてないから、それで良いんだよね? これを解いたら昔のジーナに戻るんだよね……? ………… …… 【…………ジーナ。ああ、それで良い。ひひ……繋がった、あたしとジーナが今繋がった。教えてあげる、どうするべきか。覚えてる? ジーナがさっき持ってた物。手にして地面に捨てた物。それを拾って自分の首に突き付けな。さっきの続きをするんだよ、】 ……え? さっき地面に捨てた物……? 疑問はすぐに解消された。 アイツの言葉を聞き終えて、ジーナは素早く何かを拾う。 何を拾った? 片手に持って、それは鈍く光って先が尖る……ああ、なんて事……! ウチは絶望的な気持ちになった。 ジーナはさっき捨てたハサミを持って、それを首に突き付けていたんだ。
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