第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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『駄目ーーーっ!!』 叫んだウチとほぼ同時。 白雪さんは迷う事なくアイツを離し、地を蹴りジーナに飛び込んだ。 そこからの動きは早く、瞬き三つで事態は大きく変化する。 瞬き一つ目、 白雪さんが掴むようにハサミに触れた、直後、真白な光が強く強く煌めいた。 瞬き二つ目、 触れたハサミが一気に腐食、まるで毒が侵したように赤茶色に錆び付いて、 瞬き三つ目、 錆びたハサミはザラザラと、吹いた風に形を崩して消えてしまった。 ここまでおそらく十数秒。 モニター越しに視てたけど、なにがどうしてハサミが消えたか分からない。 ただ言えるのは白雪さんが触れた途端、ハサミは腐り、跡形も無く崩れ散ったんだ。 頭が追いつかない。 それでも、ジーナの手からハサミが消えた。 今のジーナは気を失って、固く目を閉じ地面の上に横たわる。 顔色は悪いけど、胸の上下は規則的だし目立った怪我も無いみたい。 ウチは心底安堵した。 白雪さんもジーナの傍で膝を着き、長い息を吐き出していた。 そんな時だった。 空の、うんと高い所からアイツの声が聞こえてきたの。 【ひーーーひひひひひぃ! 間抜けな白雪、あたしを離してくれてありがとう! 思った通りだ! さすがだねぇ! 光道(こうどう)のオエライさんはお優しい! 悪しき(もの)よりジーナを助ける、こうなると思ったよ! あたしはこのまま行かせてもらう。滅されるなんてまっぴらだ! ま、せいぜいこれからも小娘2人を守ってやんな!】 勝ち誇った表情だった。 耳まで裂けた大きな口を三日月型に歪ませて、バカにしたような高笑い。 酷い……ウチはともかく、白雪さんは信用したのに、それをあっさり裏切るなんて、ジーナまで利用するなんて、酷い……!
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