第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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【長きにわたり、罪のない少女2人に憑りついた罪。ジーナさんを10年かけて洗脳した罪。そしてマジョリカさんを死に至らしめた罪、】 射る目に更に力が籠る。 アイツは尋常ではない圧に身の危険を感じたのだろう。 逃げたくても逃げられない体勢で【待って、話を聞いてくれ】と繰り返す。 白雪さんはそれらを無視して続けた。 【それだけじゃない。あなた、少女達の心も深く傷付けた。ジーナさんにマジョリカさんの髪を切らすだなんて……あまりに酷い、】 そこで言葉を止めた白雪さんは、ジリリと間合いを詰めた。 途端アイツは大声でわめき出す。 【ひぃっ! ま、待って、待ってって言ってるじゃないか!】 それを聞いた白雪さんは片眉を上げ、不思議そうな顔をした。 【あなた、さっきから ”待ってくれ” と繰り返すけど、忘れてしまったの? 私はもう、あなたに時間をあげたわ】 【……あげた? いつ……?】 アイツは心底分からないと言った顔でオウム返しにする。 すると白雪さんは、 【自分で言ったのよ? ”最後(・・)に罪滅ぼしがしたい、ジーナの洗脳を解きたい” と。私はあなたの言葉を信用し、その為の時間をあげたわ。でも、結局は嘘だった。自分が逃げる為にジーナさんを利用して、そして私を騙したの】 小さな子供に聞かせるように。 一言一言ゆっくりと噛み砕くように話す白雪さんに……今度はアイツが黙った。 【もう終わりにしましょう。私、マジョリカさんを待たせてるの】 そう言って、白雪さんは何を思ったのかアイツの背中の矢を抜いた。 瞬間、アイツは呆気にとられ、だけどすぐに地面を蹴って上に飛ぶ。 言葉にならない悲鳴を上げて、この期に及んで逃げるつもりで。 ウチは息を飲んだ。 白雪さんは少し遅れて大地を蹴ると、先に飛んだアイツを追い越し雲の位置で停止する。 数秒後。 空で待ち構えていた白雪さんは、 【さよなら。私、嘘つく(ひと)は嫌いなの】 足を振り上げ、アイツの頭上に一気に落とす。 【ガフッ、】 最期____ アイツは意味の無い声をあげ、 地上に落ちる事もなく、 空中で、 霧と化して消えた。
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