第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

217/285
前へ
/2550ページ
次へ
終わった……白雪さんの一撃で、アイツは消えてなくなった。 大きな画面の端から端まで、どこを視てもアイツはいない。 これでもう、ジーナは誰にも洗脳されないんだ。 これでもう、ジーナに憑りつく(やつ)はいないんだ。 『良かった……』 安堵の思いが口から漏れた。 白雪さんが助けてくれた……ジーナは無事に生きてる。 ウチはそれが嬉しくて、ほっとしたら力が抜けて、涙が溢れて止まらなかった。 感謝してもし足りない、白雪さんはウチとジーナの恩人だ。 アイツを消して、地上に降りた白雪さんは、真っ先にジーナの元へと向かった。 土の上、青い顔で横たわるジーナ。 いまだ気を失ったままだ。 少し離れた所には、命の無いウチの身体とジーナのカバンがある。 カバンからはウチの髪が幾束もはみ出して、思わずギョッとしてしまった。 そうだ……操られたジーナは切った髪をカバンに詰めていたんだ。 ウチの頭も悲惨な事になっていて、とてもじゃないけど直視が出来ない。 …… …………待って、 ………………これって、人が見たらどう思うだろう? ウチは事故で死んでしまって、近くには気を失うジーナ、……ん、ここまでは……駄目だけど……まだいい、言い訳が出来る……だけど髪は? ウチの髪は刈り取られ、ハサミこそ今は無いけど、ジーナのカバンに入ってる。 これって……状況的にジーナが切ったと分かるだろうし、ましてやカバンに詰めてるなんて…………このままではジーナが悪者になってしまう。 下手をすれば、ジーナがウチを殺したと誤解されてしまうかもしれない。 ジーナのせいじゃないのに、全部アイツのせいなのに。 洗脳されて操られてた、……だけどそれは証明のしようがない。 どうしよう、どうしたらいいんだろう? せっかく助けてもらったけれど、このままではジーナは追い詰められる。 悪くないのに責められて、噂をされて、そうなったらジーナは…… 心臓が早くなる。 悪いのはジーナじゃないとみんなに言って回りたい。 でもウチは死んでしまって姿はおろか声さえも届かないんだ。 どうしたらジーナを守れるだろう。 涙が溢れた。 さっきまでの安堵の涙が一転、悲しみと焦りの涙にとって変わる。 『……白雪さん……ウチ……どうしたらいいのかな……』 届くはずが無い、宇宙と地上はうんと離れているんだもの。 そのはずなのに、この後の白雪さんは、まるでウチの言葉を聞いたみたいな行動を取ったんだ。 大きなモニター。 そこに映る白雪さんは胸元に手をやると、タンクトップの内側から何かを指に絡めて取り出した。 あれは……ペンダント? 手にあるのはプラチナ色の十字架で、それを口元にあてたんだ。 そして、十字架に向かって大きな声でこう言った。 【バラカス、バラカス聞こえる? 白雪だけど、って出るの早っ! あまりに早くてびっくりしたわ……え? 私が出発してからどこにも行かずに? 連絡が来るのをずっと待ってたの? そ、そう、ありがとう、ちょっと引くけど感謝するわ。それでね、早速だけどお願いがあるの。大至急連絡をとってほしい(ひと)がいてね、ええ、そうよ。助けが必要なの。バラカスも知ってる(ひと)よ。私と母の友人、フェアリーゴッドマザーを現世(ここ)に呼んでちょうだい】
/2550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2374人が本棚に入れています
本棚に追加