2374人が本棚に入れています
本棚に追加
【マザー頼もしいわ! いつも助けてくれてありがとう。それで、バラカスからどこまで聞いてる?】
白雪さんがテキパキしながらそう聞くと、
【全部よ、すべてを聞いたわ。あまりに酷い。この子達の未来はこれからだというのに……気持ちを思うと泣けてくる、ああ……でも泣くのは後だわ。先に魔法をかけましょう。生きてるこの子が目を覚まさないうちに】
同じくテキパキ答えたマザーは、赤いドレスの懐の、中から何かを取り出した。
あれは……なに?
視た感じ、似ているのはオーケストラの指揮者の指揮棒。
それをサッと上げて一振りすると、棒の先から虹のシャワーが溢れ出す。
あ……!
さっき視たのとおんなじだ!
七色に、キラキラ光る虹の雨!
雨もマザーが降らせたの?
棒から虹が出せるだなんて、普通じゃ絶対考えられない。
もしかして……もしかして……信じられない事だけど、マザーは魔女で、本当に本当の魔法使い?
そんなの……本か映画の世界みたい!
ウチの胸はドキドキで、大きな画面に両手をついてかじりついた。
魔法で一体なにをするのか、気になって仕方がない。
画面の向こう。
虹のシャワーでキラキラ光る白雪さんが、マザーに向かってこう言った。
【本当にありがとう。マザー、早速だけどお願いするわ。まず最初にこの子、マジョリカさんの髪を元に戻してほしいの。もちろんずっとじゃなくて良い。彼女の葬儀が終わるまで、そうね……余裕を持って7日間。どう? 可能かしら】
聞いたウチは、さっきとは別の意味でドキドキした。
白雪さんが願ったのはウチの髪を戻す事。
だけどそれは、幽霊のウチじゃなくて、命の無い生身のウチの方なんだ。
それってやっぱり、ジーナの事を思ってくれたんだろうな。
これから先も生きていくジーナ。
あの子の未来が辛いものにならないように、そう考えてくれたんだと思うと、嬉しくて、感謝して、涙が溢れ出てしまう。
最初のコメントを投稿しよう!