第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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【マザー頼もしいわ! いつも助けてくれてありがとう。それで、バラカスからどこまで聞いてる?】 白雪さんがテキパキしながらそう聞くと、 【全部よ、すべてを聞いたわ。あまりに酷い。この子達の未来はこれからだというのに……気持ちを思うと泣けてくる、ああ……でも泣くのは後だわ。先に魔法をかけましょう。生きてるこの子が目を覚まさないうちに】 同じくテキパキ答えたマザーは、赤いドレスの懐の、中から何かを取り出した。 あれは……なに? 視た感じ、似ているのはオーケストラの指揮者の指揮棒。 それをサッと上げて一振りすると、棒の先から虹のシャワーが溢れ出す。 あ……! さっき視たのとおんなじだ! 七色に、キラキラ光る虹の雨! 雨もマザーが降らせたの? 棒から虹が出せるだなんて、普通じゃ絶対考えられない。 もしかして……もしかして……信じられない事だけど、マザーは魔女で、本当に本当の魔法使い? そんなの……本か映画の世界みたい! ウチの胸はドキドキで、大きな画面に両手をついてかじりついた。 魔法で一体なにをするのか、気になって仕方がない。 画面の向こう。 虹のシャワーでキラキラ光る白雪さんが、マザーに向かってこう言った。 【本当にありがとう。マザー、早速だけどお願いするわ。まず最初にこの子、マジョリカさんの髪を元に戻してほしいの。もちろんずっとじゃなくて良い。彼女の葬儀が終わるまで、そうね……余裕を持って7日間。どう? 可能かしら】 聞いたウチは、さっきとは別の意味でドキドキした。 白雪さんが願ったのはウチの髪を戻す事。 だけどそれは、幽霊のウチじゃなくて、命の無い生身のウチの方なんだ。 それってやっぱり、ジーナの事を思ってくれたんだろうな。 これから先も生きていくジーナ。 あの子の未来が辛いものにならないように、そう考えてくれたんだと思うと、嬉しくて、感謝して、涙が溢れ出てしまう。
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