第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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ウチの髪を元に戻す、これに続き白雪さんが次の願いを口にする。 【2つ目はマジョリカさんの身体の傷を治してほしいの。彼女、崖から落ちた時に背中を強く打ってる。運の悪い事に落ちた所には大きな岩があってね、だから出血もしてるのよ。この怪我はジーナさんにあらぬ疑いがかかるわ、だからお願い】 そうだ、それもあったよ。 落ちた崖は林の中で、普段パパとママから ”林には近付くな” と言われてる。 それなのに、倒れた場所とあの怪我では、ジーナと2人で林に入った事がバレてしまう。 ジーナが突き落としたと思われたら大変だ。 実際は違うもの。 ジーナはアイツに操られてたはずなのに、ウチが落ちる瞬間、手を伸ばして助けようとしてくれたんだ。 白雪さん……ウチの話をちゃんと聞いて覚えててくれてたんだな、……すごく嬉しいよ。 マザーさんは2つ目の願いにニッコリ笑って頷いた……けど、魔法をかける気配はない。 魔法、すぐにはかけないのかな……? ウチの髪もまだだし、もしかして後でまとめてかけるのかな、どうなんだろ。 出来れば魔法を視てみたい、と思うウチはちょっぴりソワソワしてしまう。 そんな中、白雪さんが3つ目の願いを言ったのだけど、それは少し変わった願いだった。 【ありがとう。では次の願いで最後よ。あのね、出来ればしばらくの間、ジーナさんの傍にいてあげてほしいの。この子は悪霊に憑りつかれ、10年も洗脳されてきた。やっと解放されたけど、親友のマジョリカさんが亡くなってしまって……ショックは計り知れないわ。だからこの先、彼女が思いつめたりしないように、前向きに生きていけるように助けてあげてほしいの。そう、昔……マザーがシンちゃんを助けてあげたみたいにね、】 ”シンちゃん” って、白雪さんの生きてた頃のお友達だよね。 マザーさんも知ってるんだ、……そして、助けてあげた事があるって…… その時みたく、ジーナを助けてくれるなら、それは願っても無い事だ。 マザーさんはなんて答えるだろう。 【シンデレラ……ああ、懐かしいわねぇ。あの頃、泣いてばかりのあの子を助けるのが生きがいだった。笑ってくれると私まで幸せな気持ちになったものよ。ふふふ、そうね。女の子は笑顔が一番。分かったわ、現世に残ってこの子を助けてあげる。それでしばらくの間というのは……50年くらいでいいかしら? 短い? もっと?】 ご、ごじゅうねん!? それってぜんぜん ”しばらく” じゃない。 50年ってうんと長いよ。 【マザー、ああ……そう言ってくれると思った。ありがとう。これでもう安心だわ。それじゃあ、さっそくで悪いけど、マジョリカさんの髪と身体の修復、それからジーナさんの事をお願いね。それと……ふふっ、マザー、50年は長過ぎよ。2~3年もいてくれたらそれでいい】 ホッと息した白雪さんが、へなっと笑ってそう言った。 マザーさんは力強く頷くと、ドレスの腕を肘まであげて、気合十分な笑顔になった。 【そうと決まれば! さーこれから忙しくなるわー! ヒトのサポートはいつぶりかしら! フル充電よ、手厚いサポートしちゃうんだから! さて、それじゃあ早速魔法をかけるから……白雪ちゃん! 早くここからいなくなってちょうだい!】 わわわ、いよいよ魔法だ! と思ったら……え!? 白雪さんに ”早くここからいなくなれ” って言ったんだ。 魔法、視ちゃだめなの?
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