第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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な、な、な、なに……!? スタイリスト? タッキーさん? 美のカリスマ?  いきなりすぎて分からない。 もしかして、美容師さんを(ココ)に呼ぶとか? それで、ウチの髪を整えてもらうの? で、でも! ウチの髪、男の子より短いよ。 しかもまばらで短いトコと長いトコが混ざってる。 こんなの人に視せたくない、整えるなら白雪さんに頼みたい、それにお金も持ってない、だから、だから、 そう言おうと思ったの。 呼ばないで、ダイジョブだからと、引き留めようとしたその瞬間。 『じゃあ、すぐに呼んでくるから待っててね!』 元気にそれだけ言い残し、白雪さんは消えたんだ。 『あ……逝っちゃった……ど、どうしよ、……いいのに、ウチ、こんな髪で恥ずかしいし、タッキーさん、美のカリスマだって……黄泉の国で1番のスタイリストさんだって言ってたよ……うぅ……やだな……そんなスゴイ人、緊張しちゃう、お金もないし、来てもらっても断るようだし、迷惑かけちゃうな、うぅ……どうしたらいいんだろ、』 道の上でウロウロしながらブツブツ言って、制服の、泥をパンパン手ではたく。 はたいた所で大して綺麗にならないけれど、何かしないと落ち着かない。(あんまり落ち着かないけど) …… ………… ……………… 白雪さんが消えてから、どのくらいが経っただろう? 感覚的には15分。 ん……落ち着かない。 カリスマさんって、どんな人かな……? きっと素敵な人なんだろな…… もうそろそろ来ちゃうかな……? ウチを視たら笑うかな……? それとも、同情されるかな……? どっちもやだな……ウチ、泣いちゃうかもしれないよ。 考え出したらパニックで、いっそどこかに隠れたいと思ったの。 でも……ココは宇宙の真ん中で、隠れる所はどこにもない。 どうしよう、どうにもならない、頭の中はグルグル回る。 そんな気持ちが表に出ちゃって、ウロウロしたり止まったり。 ハハハと笑って頭を抱えて……ウチはすっかりヘンな子になっていた。 その時。 ブンッ! ブンッ! さっきと同じ鈍い音がした。 今度は2回、後ろから。 その直後、ガラス細工の鈴の音の、キレイな声が聞こえてきたの。 『マジョリカさん、お待たせ! タッキーを連れてきたわ! タッキー、彼女がマジョリカさん。私の新しいお友達なの! これから黄泉に向かうのだけど、その前に思いっ切りキレイにしてあげて!』 や、やっぱり白雪さんだ……! タッキーさんも一緒みたい。 ウチはもう焦ってしまって膝がガクガク揺れ出した。 ど、どうしよ、緊張しちゃって振り向けないよ。 どうしていいか分からずに、ただひたすら固まっていた時だった。 背中から、大きな声が響いてきたんだ。 『あなたがマジョリカ!?  んまぁぁぁぁぁぁ! なんて綺麗な子でしょう! こんな綺麗な子、滅多にお目にかかれないわぁぁぁ! 素敵! 久々よ! 私の中の美の炎がメラメラ燃えてる! これは気合が入るわね、…………あなた! 私がもっと綺麗にしてあげる! 今から身も心もぜんぶ私に預けなさい! んほぉぉぉ! やったるわぁぁぁぁ!!』 え……? え、え、え、え!! タッキーさんに回り込まれて目が合って、そしてウチは再び固まる。 だってそこには、大きな身体で肌はすべすべ、つぶらな瞳の………………タコ。 か、火星人の方……だろうか?
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