第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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ウチの前に回り込み、大きな身体をくにゃっと曲げるタッキーさん。 つぶらな瞳とパチッと目が合い睫毛の長さに驚いた。 うわぁ……睫毛、ツヤツヤだぁ……それにクルンと上向いてる……って、ううん、今はそこじゃない。 もっと気になるコトがあるよ。 タッキーさん、どこをどう視ても……やっぱりタコさんなんだ。 で、でも、海にいるタコさんとは違う、大きさが違いすぎる。 白雪さんより背は(背で……いいんだよね?)低いけど、それでもウチより全然大きい(縦にも横にも)。 身体の色は薄い桃色、肌はツルツルスベスベで、足は8本、スラっと長くて優雅な感じに立っている。 ウ、ウチの知ってるタコさんじゃないよ、……お、お水、無くて大丈夫なのかな……?(ドキドキドキドキ) 『あらぁ、なぁにぃ? さっきから黙っちゃって。もしかしてこの子、照れてるのかしら』 て、照れてるというか、びっくりしてるというか、パニックすぎて逆に口数減っちゃうというか、……目の前のタッキーさんは……(チラチラチラチラ)やっぱりタコさんだよ、…………でも普通にお話してるし、マスカラしてるし、立ち振る舞いがすんごく綺麗だし、……ん……? うぅ、ん? ………………あっ!  もしかして、タコの姿は着ぐるみなのかな? 良く出来た着ぐるみで、中には人の、本物のタッキーさんが入ってるの。 そ、そうだ、きっとそうだ、で、でもな、この肌の質感は着ぐるみとは思えない、ん……でなければ、そうでなければ、信じられないコトだけど、この視た目は火星人じゃないのかな。 ど、どっちだろ……? 着ぐるみか、火星の方か、……た、確かめたい……! だ、だけど、初対面でいきなりさわるなんて失礼だし、かといって、直接聞くのも勇気がいるし……というかその前に宇宙人って本当にいたんだ、……いや、いやいやいや、いるよ、だってそうだよ、宇宙人よりもっと不思議な魔女さんだっているんだもん、火星人の1人や2人、いたってぜんぜん驚か……うそ、驚きました。 そんなコトを考えて、ぽーっとしながらタッキーさんを視上げると、長い睫毛をファサファサさせて、通る声で言ったんだ。 『マジョリカ、まずは髪を整えるわよ』 ドクン……、心臓が嫌な感じに大きく打った。 そだ……タッキーさんはウチの髪を整える為に来てくれたんだよ。 ありがたいけど、それには頭を視せなくちゃいけなくて、今のウチにそんな勇気は欠片もなくて、伸びるまでずっと帽子をかぶってたくて、だからウチは後ずさり、顔を横に振ったんだ。 『あら、嫌なの? どうして?』 『あの、せっかく来てくださったのに ごめんなさい。か、髪は、その、大丈夫です、ウ、ウチ、お金を持っていないし、それに……頭、今ヒドイ事になってるから、あまり視られたくないんです』
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