第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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『やぁね、そんなコト気にしなくていいのよ。言ったでしょう? 身も心も預けなさいって。髪がヒドイコトになってる? 大丈夫、ぜんぶ私に任せてちょうだい。絶対綺麗にしてあげるから!』 タッキーさんはスラリと長い足の中から、2本の足をウチに伸ばすとガッシリ肩を掴んだの。 意外と力が強くって、熱意がビシビシ伝わった(体育会系?)。 で、でもな、ありがたいけど勇気出ないよ、だってスゴイの、ウチの髪、びっくりしちゃうくらいヒドイの。 『あ、あの、ありがとうございます。お気持ちはすごく嬉しいです。だけどウチ、お金も持ってないんです。それに、整えようにも髪が短すぎちゃってどうにもならないと思うし……だから、その、しばらく待って、髪が伸びて、お金も用意出来て、その時改めて整えてもらえたらなって……ダメですか?』 そう、そもそも払えるお金もないんだもの。 黄泉の国って17才でも働けるのかな。 働いて、少しずつお金を貯めて、その間に髪を伸ばして……なんて思っていたのに、タッキーさんは『んほー』と笑うと、とんでもない事を言い出した。 『んま! あなたキチンとした子ねぇ、ますます気に入ったわ。絶対私が綺麗にしちゃうんだからっ! で、まずマジョリカが心配してるお金のコトだけど。黄泉の国はすべてがフリー、生活するのにお金はいらないの。食べる物も着る物もフリー、娯楽もカルチャーもフリー、もちろん髪を整えるのもフリーよ!』 『全部無料!? うそ! そんなばかな!(ドキドキドキドキ)』 『んほぉ! 本当よ、こんなコトでウソついても仕方がないわ。どうしてすべてがフリーなのかは、話すと長くなるから後で白雪に聞いてちょうだい。とりあえずこれでお金の問題は解決ね。あと1つ。マジョリカは髪が伸びるまで整えられないと思ってるのよね?』 『思ってます(コクコクコクコク)』 『ふっ、チガウわ。いいコト? 綺麗になるのに遠慮も我慢も必要ない!  髪が伸びるまで待つ? ノンノン! 待たない、今すぐ伸ばすの!』 タッキーさんは声高らかに言った後、2本の足を器用に叩いてペチンと音を鳴らしたの(ウチの肩を掴む以外の足を使った)。 それはまるで、さっきの白雪さんのようだった。 鳴らした足からピンクの光が溢れ出し、タッキーさんの身体を包んだ数秒後。 徐々に光が弱まって、再び姿が視えるようになっ……えぇ!? 『……タ、タッキーさん、その頭……!』 それだけ言うのが精一杯。 あまりにも衝撃的であまりにも刺激的、そしてあまりにも似合ってる……! 『マジョリカ、私を視てごらんなさい』 言われなくても釘付けです……! タッキーさんに、ううん、正確にはタッキーさんの頭にだ。 目の前の美のカリスマは、数秒前まで身体全体スベスベで、つるんと剥きたて玉子のようで、なのに今は……ラプンツェル? ブロンドの長い髪。 ツヤツヤで滑らかで、シルクみたいなキレイな髪が、タッキーさんの頭から延々と、そう延々と、光る道のうんとうんと、うーーーーんと先まで生え伸びていたのだ。
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