第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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『どう? 分かったでしょう? 髪が無ければ生やせばいい、短ければ伸ばせばいい。難しく考えなくていいの。さあ、さあさあさあ! これで心配事はなくなったわね! マジョリカ……逃がさないわよぉ!』 んほー!! 言うが早いかタッキーさんは、ウチに向かって突進すると、予告も無しに頭の帽子をヒョイッと掴んでポイッと遠くへ投げたんだ! 『きゃー! ま、待ってーっ!』 『待たないぃぃん!』 タッキーさんは、逃げるウチを2本の足でクルクル捕まえ、美のカリスマはまるでハンター。 ハンターはつぶらな瞳をキラキラさせて、残りの足を、さっきみたいにペチンと大きく鳴らしたの。 直後____ ピカッ! ____ピンク色の強い光がフラッシュみたいに煌めいて、その光の跡地には…… 『…………え……? ……え? えーーーー!?』 うそでしょ……? 信じられない……ここは宇宙の真ん中で、ここにあるのは輝く星と光る道だけ。 なのに、なのに……! タッキーさんに抱えられた目線の先、そこには大きな鏡があった。 緩やかな曲線、楕円のフォルム。 白木のフレームには今までに視た事がないような、バラと小鳥の彫刻が見事に施されている。 鏡の前には同じデザインの椅子もあり、座り心地もすごく良さそう。 綺麗……繊細で上品で……まるでお姫様のドレッサーだ。 『すてき……』 ぽーっとしながら眺めてた。 ウチの部屋にもドレッサーはあったけど、カントリー調で子供っぽくて……ぜんぜん違うよ。 大人の雰囲気でため息が出ちゃう。 『気に入ったかしら?』 タッキーさんはそう言ってウチを放すと、スッと一歩前に出た。 そして、胸に足をあて恭しくお辞儀をすると、 『タッキーのサロンへようこそ。今宵はマジョリカを美しくする為だけに此処に来たの。どんな悲しみも跳ね返すような、喜びは倍になるような。あなたも、まわりも、みんながハッピーになるくらいのファビュラスにするから。楽しみしてちょうだい!』 ああ、そうか。 宇宙の真ん中。 突然あらわれた美しいドレッサー。 ここはサロンになったんだ。 美のカリスマのタッキーさんのサロンに。
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