第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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『さ、お座りなさいな』 ウチの背中に足を添え、タッキーさんは椅子に座るよう勧めてくれた。 言われるままに、おずおずと近付くと…… う、うわぁぁぁ……! やっぱり綺麗だぁ……彫刻のバラが繊細で……小鳥は今にも飛び立ちそう(しかもカワイイ)。 『し、失礼します』 声をかけ、ドキドキしながら腰をかけると……思った通りだ。 座り心地がすんごく良くて、楽ちんなのに自然と背筋が伸びるんだ。 わぁ! わぁ! わぁ! こんなに素敵な椅子に座れるなんて夢みたい。 しかもサロンは宇宙にあって、上下左右、どこを視ても星だらけ。 こんなにロマンチックなサロン、他にはないだろうなぁ。 考えて、胸が高鳴りワクワクした、……だけど、ドレッサーの鏡に映る自分の姿に気持ちは一気に下降する。 そうだ……不思議な事がありすぎて、それで少し忘れてたけど、ウチの頭……やっぱり酷いな。 視るのが辛い、鏡の前から逃げ出したいよ。 ああ……でも頑張る、あと少しの辛抱だ。 タッキーさんはウチの髪を伸ばすって、ファビュラスにするって、そう言ってたもの。 ____んほー! ____身も心も私にあずけなさい! ウチ、タッキーさんを信じるよ。 そのタッキーさんは後ろに立って、鏡越しと直接と、交互にウチを視ているの。 つぶらな瞳は真剣そのもの。 2本の足でウチの頭を動かしながら、いろんな角度でジッと視て……その間なんにも喋らなかった。 それから少しして……タッキーさんは足を止めると、声高らかにこう言った。 『よし! 方向性が決まったわ! だけどあくまで方向性。マジョリカはどんな髪でも似合うだろうから、いろんな髪をためしてみましょ! んほぉぉぉ! 盛り上がってきたわぁぁぁ! いっくわよぉぉ! まずはコレェ!』 ペッチーーーーン!! 美のカリスマが2本の足を激しく鳴らすと、ピンクの光がピカーーッとウチを包み込む! きゃっ! まぶしっ!! 思わず目を閉じた。 閉じてすぐ、後ろに聞こえる弾む声。 ガラス細工の鈴の音の……これは白雪さんの声だ。 『えぇ!? わわわわ! なにこれステキ! こんなの初めて視たわ! でもでもでもこの髪一体どうなってるの!?』 え、なにそれ気になる! 時間にしたらほんの一瞬。 髪……伸びたのかな? 元通りになったのかな? ドキドキしちゃって目が開けられない。 でも、首とか肩とか背中とか、なかったはずの髪の感触がある……伸びたのかな……? 『さあ、マジョリカ。目を開けてごらんなさい。あなたの新しい髪の1つ目の候補よ。テーマは【雨上がりの空】、かしら』 耳元に聞こえたタッキーさんの声。 後ろでは白雪さんのはしゃぐ声も聞こえてくる。 ウチの髪、テーマは【雨上がりの空】……なのか。 それってどんな髪? ワクワク半分、ドキドキ半分。 ウチはそーっとゆっくり目を開けた。 『…………うそ!』 わ……! ウチの髪、長さが元に戻ってる! ストレートの腰まで伸びる長い髪、……ああ……嬉しい……泣きそうだよ。 これでもう鏡を視ても辛くない……んだけど……ちょっと待って! 白雪さんの言う通りだ。 この髪、一体どうなってるの? 『どう? 素敵でしょ! 雨上がりの空にかかる七色の虹! マジョリカの髪色を思い切って虹色にしてみたの! こんな髪色、普通のヒトじゃあ負けちゃうけど、マジョリカの美しさなら負けてない! これが似合うのはあなたしかいないわ!』 わぁ……! すごい、すごい! 本当に虹色だ! まるでフェアリーゴッドマザーの魔法みたい! すんごく綺麗!  すんごく素敵! でも……ちょっと派手じゃないかなぁ?  
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