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『さ、お座りなさいな』
ウチの背中に足を添え、タッキーさんは椅子に座るよう勧めてくれた。
言われるままに、おずおずと近付くと……
う、うわぁぁぁ……!
やっぱり綺麗だぁ……彫刻のバラが繊細で……小鳥は今にも飛び立ちそう(しかもカワイイ)。
『し、失礼します』
声をかけ、ドキドキしながら腰をかけると……思った通りだ。
座り心地がすんごく良くて、楽ちんなのに自然と背筋が伸びるんだ。
わぁ! わぁ! わぁ!
こんなに素敵な椅子に座れるなんて夢みたい。
しかもサロンは宇宙にあって、上下左右、どこを視ても星だらけ。
こんなにロマンチックなサロン、他にはないだろうなぁ。
考えて、胸が高鳴りワクワクした、……だけど、ドレッサーの鏡に映る自分の姿に気持ちは一気に下降する。
そうだ……不思議な事がありすぎて、それで少し忘れてたけど、ウチの頭……やっぱり酷いな。
視るのが辛い、鏡の前から逃げ出したいよ。
ああ……でも頑張る、あと少しの辛抱だ。
タッキーさんはウチの髪を伸ばすって、ファビュラスにするって、そう言ってたもの。
____んほー!
____身も心も私にあずけなさい!
ウチ、タッキーさんを信じるよ。
そのタッキーさんは後ろに立って、鏡越しと直接と、交互にウチを視ているの。
つぶらな瞳は真剣そのもの。
2本の足でウチの頭を動かしながら、いろんな角度でジッと視て……その間なんにも喋らなかった。
それから少しして……タッキーさんは足を止めると、声高らかにこう言った。
『よし! 方向性が決まったわ! だけどあくまで方向性。マジョリカはどんな髪でも似合うだろうから、いろんな髪をためしてみましょ! んほぉぉぉ! 盛り上がってきたわぁぁぁ! いっくわよぉぉ! まずはコレェ!』
ペッチーーーーン!!
美のカリスマが2本の足を激しく鳴らすと、ピンクの光がピカーーッとウチを包み込む!
きゃっ! まぶしっ!!
思わず目を閉じた。
閉じてすぐ、後ろに聞こえる弾む声。
ガラス細工の鈴の音の……これは白雪さんの声だ。
『えぇ!? わわわわ! なにこれステキ! こんなの初めて視たわ! でもでもでもこの髪一体どうなってるの!?』
え、なにそれ気になる!
時間にしたらほんの一瞬。
髪……伸びたのかな?
元通りになったのかな?
ドキドキしちゃって目が開けられない。
でも、首とか肩とか背中とか、なかったはずの髪の感触がある……伸びたのかな……?
『さあ、マジョリカ。目を開けてごらんなさい。あなたの新しい髪の1つ目の候補よ。テーマは【雨上がりの空】、かしら』
耳元に聞こえたタッキーさんの声。
後ろでは白雪さんのはしゃぐ声も聞こえてくる。
ウチの髪、テーマは【雨上がりの空】……なのか。
それってどんな髪?
ワクワク半分、ドキドキ半分。
ウチはそーっとゆっくり目を開けた。
『…………うそ!』
わ……!
ウチの髪、長さが元に戻ってる!
ストレートの腰まで伸びる長い髪、……ああ……嬉しい……泣きそうだよ。
これでもう鏡を視ても辛くない……んだけど……ちょっと待って!
白雪さんの言う通りだ。
この髪、一体どうなってるの?
『どう? 素敵でしょ! 雨上がりの空にかかる七色の虹! マジョリカの髪色を思い切って虹色にしてみたの! こんな髪色、普通のヒトじゃあ負けちゃうけど、マジョリカの美しさなら負けてない! これが似合うのはあなたしかいないわ!』
わぁ……!
すごい、すごい!
本当に虹色だ!
まるでフェアリーゴッドマザーの魔法みたい!
すんごく綺麗!
すんごく素敵!
でも……ちょっと派手じゃないかなぁ?
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