第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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…… ………… ……………… 『懐かしいわねぇ……マーちゃんと初めて会ったあの日の事、私、よーく覚えてるわ』 白雪ちゃんはそう言うと、目を細めて上を視た。 小さな和菓子を食べながら、ウチにもひとつ食べさせながら。 ____あの日、 タッキーはウチの髪を宇宙色にしてくれた。 地の色はブロンドから黒へと変わり、その髪にはどこかで煌めく本物の宇宙が映ってるんだ。 ウチは一目で気に入って、それからずっとこの髪だ。 『ああ、素敵! その髪、とっても似合ってるわ! マジョリカはファビュラスになったのよ。だから自信を持ちなさい。綺麗になるコトを恐れなくて良いの。綺麗にれば気持ちが明るくなるんだもの。だから毎日綺麗でいなさい。朝起きたら鏡を視て髪を丁寧にとかすの。そしてニッコリ笑ってごらん。辛かったコトなんてすぐに忘れちゃうわ! んほー!』 タッキーはこう言って、ウチをギュッと抱きしめてくれたんだ。 ウチに何があったのか……もしかして白雪ちゃんに聞いて知ってたのかな? それとも、あんなにヒドイ頭だったから、知らなくても何かあったと分かったのかな? 聞いても曖昧に笑うだけ、どっちかは分からない。 だけど……ひとつだけ分かるコトがあるんだ。 それはタッキーはすんごく優しいタコだってコト。 死んだばかりのウチが、泣いてばかりのウチが、笑って入国出来るように全力で頑張ってくれたんだ。 ああ……もう、思い出すと泣きそうだ。 ありがたくって仕方がない。 タッキーのおかげで、笑って黄泉の国に逝くコトが出来た。 白雪ちゃんの瞬間移動は使わずに、道を、白雪ちゃんとタッキーとウチ、この3人でおしゃべりしながら歩いたの。 楽しかったなぁ。 ひっきりなしに次から次へとおしゃべりしてさ、白雪ちゃんは筋肉話を、タッキーは美とはなんぞや話を、それぞれが声を大に力説してた。 ウチはどっちの話も面白くって、夢中になって聞いていたの。 ウチは死んで、色々……そう色んなコトがあったけど、それでも、良い最期を迎えられたと思うんだ。 あ……でもイッコだけ、笑える失敗があったっけ。 ウチ、うっかり聞いちゃったんだよね。 タッキーに会ってからずっと疑問に思ってたコト。 笑い合って打ち解けて、今なら聞ける、今がそのタイミングだ……そう思って、それで、 『あ、あの! ひとつ聞いてもいいですか?』 『なぁにぃ? 良いわよ、なぁんでも聞いてちょうだいな』 おぉ! さすが美のカリスマ、心が広くて余裕があるな。 と、言う事で聞いたのが…… 『…………あ、あのっ! タッキーさんのそのビジュアルはもしかして、………………か、か、火星人の方ですか……!?』 あはは、思い出すと笑っちゃう。 ウチがそれを聞いた時。 タッキーはぷーっとほっぺを膨らましてこう言ったんだ。 『んも! どうして地球人はこうなのかしら! みんな100パーセント聞いてくるのよ! チガウから! 火星人じゃないから! 私はね、コナモノ星のタコ族ですからー!』
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