第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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『あははは、思い出したわ! あの時のマーちゃん、 ”火星人の方ですか?” って、真剣な顔で聞いてたわよねぇ』 大笑いする白雪ちゃんは目尻の涙を拭ってる。 『いやっ、でもっ、あのビジュアルじゃあ仕方ないよぉ。ウチね、絶対そうだと思ってた、密かに自信があったんだ。なのに違うんだもん。 しかもさ、火星じゃなくてコナモノ星よ! って言われても……コナモノ星ってドコデスカってなるじゃない』 白雪ちゃんにつられたウチもなんだか笑いが止まらない。 こういうのって1度ハマるとダメだよね。 なんでもかんでも可笑しくなっちゃう。 しばらく笑って、ようやく波がおさまって、ちょっぴり余韻を引きずりながら、ウチは2人のお茶を淹れかえた。 コポコポコポ……ほわぁ…… 熱い湯気と良い香り。 その二つがほわんと立って、一口飲んだらなんだかとっても落ち着いた。 白雪ちゃんは『はぁ……』と幸せなため息をついたあと、ウチを視て、そして、こう聞いたんだ。 『マーちゃん、もう大丈夫なの?』 言葉は短い、……でも、その中にはたくさんの愛情と心配が込められている。 ああ、ごめんね、心配かけてごめんね。 でもね、ウチはもう____ 『大丈夫だよ。最近はね、思い出して泣く事はほとんどないの。昔は毎晩夢を視たし、そのたびに泣いていたけど今は悪夢を視ないんだ』 ____そう、 ウチが死んだ時、いろんな事がありすぎた。 ジーナの事、髪の事、悪霊(アイツ)の事……悲しくて、辛くて、怖かった。 そんなウチを、白雪ちゃんとマザーとタッキー、そして陰ながらバラカスも助けてくれて、だからウチは笑って黄泉に逝けたんだ。 入国してからも驚く事の連続だった。 美しい黄泉の国、善人しかいない国。 誰もかれも優しくて親切で、指を鳴らせばなんだって手に入る理想郷。 17才で命は終わってしまったけれど、黄泉の国(ここ)で新たに楽しく生きていこうと、頭では思ってた。 だけど……そう簡単にはいかなかったんだ。 悪霊(アイツ)のせいで味わった絶望感、恐怖。 そういった負の感情は、ウチの心に刻まれて深いトラウマになった。 昼間は笑って過ごせるのに、夜になって眠りにつくと、やけにリアルなあの日の事を何度も何度も夢に視た。 汗びっしょりで夜中に起きる。 呻く寝言は悲鳴に変わる。
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