第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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黄泉に入国後、最初の一か月はぼんやりしてた。 死んだ直後は気が張ってたから分からなかった……けど、後から湧いた死の実感は、ウチを無気力にさせたんだ。 それに加えて悪夢を毎晩視るものだから、慢性的な寝不足でまともにモノが考えられなくなっていた。 黄泉の国には入国間もない霊達(ひとたち)向けに、みんなで住めるシェアハウスがあった。 ウチは黄泉で独りだし、しばらくそこでお世話になろうと考えたけど、あの頃の無気力は入居の為の手続きさえも面倒で、頑張ってもやる気にならずに諦めた。 代わり、人気(ひとけ)の少ない空いた土地で独り暮らしを始めたの。 ママもパパもいない独りの生活。 あんまり広いと淋しくなってしまうから、鳴らした指でごくごく小さな家を建てた。 イメージはドールハウス。 幼い頃にジーナと遊んだ、楽しい記憶を一生懸命辿ったの。 視た目はまあまあ記憶の通り、だけどお部屋は殺風景。 指を鳴らして飾りたいけど、構築は覚えたばかりで細かなモノが造れない。 それでもやっぱりインテリアには拘りたいと、ある日、思い切って街に出かけたんだ。 元々ショッピングは大好きで、生きてた頃はママやジーナとしょっちゅう行ってた。 なのに……いざ着いても楽しめなかった。 賑わう街はどこを向いても(ひと)がいて、みんながみんな楽しそうに笑ってる。 だけどウチは独りきり。 黙ったまんまで歩いても気持ちは沈むばっかりだ。 『……もういいや、帰ろう』 結局、そんな事の繰り返し。 だから部屋は、いつまでたっても殺風景。 淋しくて不安で仕方がない。 そんなウチの楽しみは、たまに会える白雪ちゃんとの時間だった。 会えば一緒にゴハンを食べて、おしゃべりしてすごすんだ。 楽しくて嬉しくて、あっという間に時間が過ぎて、帰る時は涙を堪えるのが大変。 白雪ちゃんとバイバイしたあと。 独りの家は淋しくて、泣いて泣いて、泣き疲れて眠るけど、悪夢を視ればすぐに起きてしまうんだ。
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