第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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黄泉での生活が一か月経ったある日の事。 白雪ちゃんとゴハンを食べて、デザートのケーキを待っていた時……彼女は突然こんな事を言い出したの。 『ねぇ、マーちゃん。私、あなたが心配だわ。シェアハウスにも入らないで独り暮らしだなんて、そんなの無茶し過ぎよ。確かに黄泉の国(ココ)ならお金の心配も犯罪に巻き込まれる心配もない。でも、不慣れな黄泉で毎日独りじゃ気が滅入るわ。本当は……私の家に来てもらって一緒に住めば良いんだけど、私も母も仕事で家を空ける事が多いのよ。そうなると、住む家が変わるだけで結局あなたを独りにしてしまう。それじゃあ意味がないわ』 白雪ちゃんは眉間に薄くシワを寄せ、心配そうな顔をした。 あ……こんなコトを言わせてしまうなんて……どうしよう……白雪ちゃんの気持ちはすんごく嬉しいけど、あんまり迷惑かけたくないよ。 仕事が忙しいのは知ってるもん。 大丈夫だって言わなくちゃ、独り暮らしは楽しいよって笑わなくちゃ。 『し、白雪ちゃん、ウチね、ダイジョウブだよ。独り暮らしはすんごく楽しくて……じゅうじつしてて……あ、あれ……? どうしたのかな、ヘンだな……あ、ごめ、大丈夫、泣いてないよ、あのね、ウチ本当に、毎日……すんごく……たの……たのし……うぅ……』 言葉が続かなかった。 笑おうとしたのに、心配かけたくないのに、勝手に涙が流れてきたの。 『やだ……やっぱり泣くほど辛かったのね、ああ……マーちゃんごめんね、もう大丈夫よ。これからは淋しい思いはさせないから。あのね、しばらく私の親友の家に住まない? 彼に話したらいつでも来て良いと言ってたわ』 白雪ちゃんのお友達のオウチに……? それはありがたいけど…… ”彼” って言った……よね? 『え、えっと、白雪ちゃん。そのお友達の方って、その、』 『ああ、バラカスって言うの。彼はとっても優しくてね、』 『え、え、っと……待って! ありがたいけど……さすがに男の(ひと)と一緒に住むのは……』 『やだ、そんなコト気にしなくていいのよ。大丈夫、彼は男性だけど、会えばきっと一緒に住んでもいいと思えるはずよ!』 『え、ダメ、きっと思わない、だって、ウチ、えっと、その』 あの夜は2人でさんざん大騒ぎしたんだ。 白雪ちゃんは大丈夫、まずは会ってみてときかないし、根負けしたウチは、白雪ちゃんと一緒にお友達に会う事になったんだ。 翌日。 こちらがバラカスよ、と白雪ちゃんが紹介してくたのは…… 『キュルン! キュキュキュ! キューン♪』 巨大すぎるフワモコが、キュートにキュルンと小首を傾げて立ってたの! ウチは一瞬でココロを掴まれ、 『か、可愛いーっ! もふもふのパンダちゃんだぁ! 白雪ちゃん! ウチ、バラカスさんと一緒に住みたい!』 こう即答していた。 そう、そうなのだ。 これが、ウチとバラカスとの出会いだった。
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