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『ユリ……ユリ……ありがとうな。爺ちゃんも婆さんも、貴子が死んでよ、助けてやる事が出来なくてよ、悔やんでも悔やみきれなくてよ、悔しくて、情けなくて、悲しくて、辛くてよ、貴子のかわりに俺が死ねばよかったのにって思ってよ。だけどな、ユリ、おまえがいてくれたから、爺ちゃんも婆さんも生きてこれたんだ。おまえがいなかったら爺ちゃんらはとっくに死んでた。おまえが救ってくれたんだ、おまえのおかげで本当に幸せだった。ありがとうな』
「爺ちゃん、死んでから泣き虫になったね。えへへ、いつもと違うからなんかへんな感じ」
『なに!? 爺ちゃん泣き虫なんかじゃないぞ!、泣き虫なのはユリだろう?おまえだって泣いてるじゃないか』
「えへへ、私だけじゃないよ、婆ちゃんだって泣いてるもん!」
『そうねぇ。ユリちゃんもお爺さんも私もみんなして泣いてたんじゃあ、貴子に笑われるわねぇ』
「ママに笑われる?」
『そうよ、笑われちゃう』
「そっか……うん……涙拭く! ほら! 爺ちゃんも早く拭いて……って、やだっ! 爺ちゃん鼻水出てるよ! 汚いなー先に鼻拭いてよねー」
『なに言ってんだユリ、おまえだって鼻水垂らしてるぞ』
「え! ウソでしょ!」
ユリちゃん、本当です。
まあ、僕にしてみれば鼻水垂らしてくれてた方がより話やすくていいんだけど。
僕は黙ってポケットティッシュを差し出した。
「あ……なんかすみません」
素直に受け取った彼女は、僕に背を向けビィィィィっと豪快な音をさせ鼻をかみ、丸めたティッシュをパーカーのポッケに突っ込んだ。
「この11年本当に温かくて幸せだった。だけどいつも思ってたんだ、ここにママがいれば最高なのにって、」
『……そうだな、爺ちゃんもずっとそう思ってたよ』
お母さんがユリちゃんとお父さん、そして僕達にも中に入るように手招きをした。
玄関を入ってすぐにあるキッチンを抜け、間仕切りの引き戸の向こうはリビングだ。
田所さんが待ってる。
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