第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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最初の日から一週間、バラカスはずっと徹夜をしてくれた。 眠ったウチがいつ起きても良いように、悲鳴をあげたらすぐに来れるように。 おかげでウチは次の夜から悪夢を視なくなった。 それは多分、悪夢で起きても独りじゃない、バラカスが来てくれる、その安心感が気持ちを鎮めてくれたからなんだと思う。 ウチが本当に怖かったのは、悪霊(あいつ)でも操られたジーナでもなかったの。 命を失くして黄泉に来て、パパとママとも離れてしまって独りぼっちになったから、そんなのウチは初めてで、その孤独感がすごくすごく怖かったんだ。 バラカスはウチの孤独を有り余るほど埋めてくれ、命を失くした絶望感を片っ端から潰してくれた。 マジョリカ、街に買い物に行くか、 マジョリカ、晩メシはなにがいい? マジョリカ、庭にブランコ作ってやったぞ、 マジョリカ、映画でも視るか、 毎日毎日。 バラカスは、飽きもせずに優しくしてくれた。 相変わらず口は悪いしズケズケ言うし、大雑把でテキトウで、細かいコトは気にしない、……そんなのが気にならなくなるくらいに優しかった。 だけど……パンダのスゴイところはそれだけじゃない。 特別何かをしなくても一緒なだけで癒される。 徹夜をしてた一週間と、それ以外でも仕事で寝れない次の日は(バラカスは家で仕事をしてる)、決まって庭でゴロンとなって、 『夜に寝れなきゃ昼間に寝ればいいだけだ』 とかなんとか言いながら、イビキをかいて昼寝した。 そんなの視ると平和だなぁって和んじゃうから、ついついウチも寝ちゃうんだ。 そして起きたら晩ゴハン。 バラカスが作るのは、やっぱりウチの好物だ。 一緒に住んで3か月。 最初の頃から比べると、だいぶ元気になってきた。 毎日が忙しい。 遊んだりおしゃべりしたり、ゴハンを食べたり昼寝をしたり。 街に行くのも楽しくなった、前は行ってもつまらなかったのに。 バラカスが一緒だから、白雪ちゃんも毎日じゃないけど一緒だから、それだから楽しいの、淋しくないの。 3人でいる時は、なんだか家族みたいだなって……密かに思ってる。 バラカスがパパで白雪ちゃんがママ、……ん、でもな、白雪ちゃんは若いからお姉ちゃんかな。 ああでも、やっぱりママがいいよ。 優しくて綺麗、ウチのママとおんなじだ。
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