第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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____そして先週から。 白雪ちゃんに誘われて、ウチは【光道開通部(こうどうかいつうぶ)】で働くようになった。 バラカスと暮らし始めてだいぶ元気になったコトだし、何か新しい事を始めるには良い機会だと……なんてウソ、そんなのは表向き。 本当のトコロは違くって、ウチには2つの下心があったんだ。 下心の1つ目は白雪ちゃんだ。 ウチが光道(こうどう)で働けば、大好きな白雪ちゃんと毎日会えると思ったの。 白雪ちゃんはいつだって忙しい。 残業は日常で、休みの日だって呼び出される。 ”(おさ)だから仕方がないわ” と白雪ちゃんは笑うけど、それにしたって忙しすぎだし、ウチと一緒にいる時だって、何度か途中で帰ってしまった。 今の現状、週に1回会えるかどうか……なんだけど、それじゃ足りない、白雪ちゃんともっといっぱい会いたいよー! …………とは言えず。 困らせたらダメなんだとひたすらガマンしてたのだ。 だけど光道(こうどう)で働けば……ふふふふ。 そして2つ目の下心、それは…………モニターだ。 3か月前、ウチが死んだあの日。 光る道で初めて会った白雪ちゃんは、ウチに現世を視せる為、指を鳴らしてモニターを出現させた。 黒板くらいの大きさで、流れてくるのはクリアな映像とクリアな音声。 宇宙と地球で離れているのに、その距離を感じない。 リアルタイムで視る事が出来た。 ウチは……ウチはさ、そのモニターで、もう一度現世が視たいと思ったの。 ウチが死んだのは突然だったし、その時、色々あって混乱してて、誰にもサヨナラが言えなかった。 それがすごく心に残って、悲しくて辛くって、だからウチ、せめてモニターで、パパとママとジーナ……みんなの姿が視れたらなって思ったんだ。 白雪ちゃんには1度お願いした事があるの。 前に出してたモニターで、現世の様子を視せてほしい、……と。 だけど答えはノーだった。 現世が視えるモニター。 これは誰でも好きに視れる訳じゃない。 【光道開通部(こうどうかいつうぶ)】の職員である事が最低条件。 だけどそれだけじゃないの。 チーフ以上の役職でないとダメだし、それに加えてそもそも私的にモニターを視る事は禁じられているのだとも、言っていた。
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