第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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ウチの内緒の下心。 こんな感じで動機が不純なものだから、光道(こうどう)の研修もイマイチ頭に入らなかった(覚える事が膨大すぎて、しょっぱなから挫けそうなのもある)。 それでもこの一週間、ウチは休まず毎日通った。 行けば白雪ちゃんに会えるから、白雪ちゃんが教官だから、顔を視るのが嬉しかったのだ。 ____という事で、ここまではいいかしら。 この宇宙には、みなさんが知らない星が沢山あります。 私達【光道開通部(こうどうかいつうぶ)】のオペレーターは、各星の死者達を迎えるにあたり、最低限、その星の文化や風習を知っていなければなりません。すべてを覚えるには長い時間を要するでしょう。ですが、それらを覚える事で死者達を安心させ、信頼を得る事が出来…… ああ、教壇に立つ白雪ちゃん……かっこいいなぁ。 教室みたいな研修室で、研修生もいっぱいいるのに堂々と話してる。 2人でおしゃべりしてる時とはまた違う。 まるでガッコの先生みたいだ。 研修の内容よりも、白雪ちゃんが気になっちゃう。 ノートも取らずにうっとりしながら眺めていると、教壇の白雪ちゃんと目が合った。 ウチはちょっぴりドキドキしながら、小さく小さく手を振った……んだけど、白雪ちゃんはそれには応えず、困ったように笑うだけ。 あ……ウチ、今ダメなコトをしたのかな、……そっか、そうだよね、今は研修中だもの、他にもいっぱいヒトがいるのに、手なんか振って困らせたんだ。 ごめんなさい、もうしないから、大人しくしてるから、だからキライにならないで。 …… ………… ……………… その日の研修が終わり、みんなそれぞれ帰り支度をしている時だった。 研修室に白雪ちゃんが顔を出し、 『マーちゃん、ちょっといいかしら』 ウチを個別に呼び出したんだ。 『な、なぁに? ……もしかして、今日のコト怒ってるの? ウチが研修中に手を振ったから、……ごめんなさい、もうしないよ、』 きっとこれだと思ったウチは、許してほしくて言われる前にあやまった。 『手? ああ、午前中の話ね。大丈夫よ、気にしないで。マーちゃん、私と目が合って、ついつい手を振っちゃたんでしょう? 私も本当は手を振り返したいと思ったの。だけど研修中だからガマンしたのよ』 『そ、それ本当? 怒ってない?』 『やだ、私、怒ってなんかないわ。マーちゃん心配しすぎよ。 ん……あのね、そうじゃなくて、……ねぇマーちゃん。もしかして……光道(こうどう)に来るのイヤだった? 研修中、ずっとボンヤリしてるから気になっちゃったのよ……あなたと一緒に働けたらって思ったけど、イヤだったら無理しなくていいのよ?』
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