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何も言えずに俯いて、白雪ちゃんはそんなウチの頭を撫ぜると、静かな声でこう続けた。
『前に会った時に言っていたじゃない。私、覚えてるわ。マーちゃんはモニターでジーナさんとご両親の姿が視たいんでしょう? その気持ちは分からなくはない。でもね、前も言ったけど、モニターはオペレーターになるだけじゃ視れないの。チーフ以上の役職が必要だし、チーフになったとしても業務以外の私的な視聴は禁止されてる』
『それは……確かに前に聞いたけど、ダメなのは分かってるけど……どうしても視ちゃいけないの?』
おずおずと、最後の望みでそう聞いた。
目が合った白雪ちゃんは、優しいけれど、キッパリと言ったんだ。
『いけないの。それがルールだわ。ルールを破ればペナルティがつく。視た本人と、それから上司である私にもね』
『し、白雪ちゃんにも!? ……そっか……ウチだけにペナルティがつくなら良いけど、白雪ちゃんには迷惑かけたくないよ、……ごめんなさい、ウチ……軽く考えてた、』
『ううん、分かってくれたらそれで良いの。あのね、誤解しないでね。私は怒ってるんじゃないの。光道に来て一週間しか経っていないんだもの。そういうのを知らなくて当然だわ。これから覚えていけばいいの』
『…………うん、でも……ごめんなさい。ウチね、突然死んじゃったから、パパとママにサヨナラも言えなかったから、せめて顔が視たいなぁって……思っちゃったんだ。ジーナも同じ、操られてたジーナじゃなくて、いつもの優しい顔が視たかったの。……ウチ、自分の事しか考えてなかった。ごめんなさい……』
泣かないように、唇を噛み締めてあやまった。
ここでウチが泣いたら、白雪ちゃんはもっと困ってしまうもの。
こんな事、言いにくかっただろうな。
『ああもう、そんなに唇噛んだら痛くなるわ。いいの、分かってくれたらこの話はオシマイ。それにね、分かるのよ。サヨナラも言えないまま、突然亡くなったんだもの。ご両親の顔が視たいと願うマーちゃんを誰も責められない。出来る事なら私がもう一度視せてあげたいくらいだわ。ただ、ルールはルールだから。そこは分かってね』
コクンとウチは頷いた。
淋しいけど、ちょっぴり辛いけど、モニターは諦める。
今夜から寝る前に、頭の中で一生懸命思い出すよ。
だから、だいじょうぶ。
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