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ユリちゃんの小さな爪先が、引き戸の取っ手にかかった。
見ていて思わず手を差し伸べたくなるくらいの手の震え。
途中何度も真っ赤な目と鼻で僕らを振り返り、
「……もうっ! ママに、早く、逢いたいのに! 手が、震えて、うまく開かないよぉ……」
と、半泣きだ。
心配そうに見守るお父さんとお母さんは現世の物質に干渉できない、ゆえに引き戸を開けてあげる事ができない。
だからといって僕や社長がかわりに開けるのは何か違う気がする。
だからね、ユリちゃん、君しかしないんだ、頑張れ、頑張れ、頑張れ……。
震えのとまらないユリちゃんは、いったん取っ手から手を離すと、ペチペチと自分の手を叩き始めた。
「とまれ……とまれ……震えるな……」
ペチペチ! ペチペチ! ペチペチ! ペチペチ!
や、ちょっと、叩きすぎじゃないだろうか……?
手の甲が赤くなっている。
僕はそんなユリちゃんを止めるか否か迷っていた時、引き戸の向こうから柔らかな、それでいて慌てたような声が聞こえてきた。
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