第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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追われているのはウチと年の変わらなそうな、制服姿の女の子。 長い髪は金髪だけど、見るからに傷んでいるからきっと無理に染めたんだ。 後ろから追いかけてるのは、同じく年の近そうな制服姿の男女が数人。 追いながら怒鳴る声が怖くって、思わずパンダの毛皮を掴んだ。 『バラカス……この子、こんなに大勢から追われてるよ、……どうしよう、捕まったら大変な事になるんじゃないかな』 言ってる間に、女の子は走って走って逃げるけど、運の悪い事に道は行き止まりになってしまった。 そこは人気(ひとけ)のない寂しい場所で、古びた街灯は濁った明かりを放ってる。 追い詰めた数人は、息を切らせて足を止めると、あっという間に女の子を取り囲んだ。 『ね、ねえ! どうにか出来ないの!? このままじゃあ、この子何されるか分からないよ、助けてあげてよ!』 バラカスは『ちょっと待て』と短く答えて画面の中をジッと視る……そして、 『マジョリカ、この姉ちゃんは大丈夫だ』 ニヤリと笑って言ったんだ。 『ちょっと! 大丈夫な訳ないよ! この子1人なんだよ!?』 バラカスがこんなに薄情だなんて思わなかった、ウチにはすごく優しいのに……! 『なんだよ泣くな。よく視てみろ。コイツ、手に木刀持ってるだろ。それにこの顔……ケケケ! 笑ってやがる!』 『え……? …………あっ! 本当だ、……確かに笑ってる、しかも……うぅ…すんごく悪い顔だ……この子、怖くないのかな……?』 『平気そうだな。コイツの足を視てみろ。細いけど筋肉がスゲェ、腕もそうだ。喧嘩慣れしてんだろうな。ヤバそうなら助けてやらんでもねぇがよ、その必要はねぇだろ』 『で、でも……いくら喧嘩慣れしてるったって、この人数相手じゃ……』 心配で目が離せなかった。 国は違うけど、もしかしたらウチと同じ年……ううん、よく視れば顔があどけないから年下かもしれない。 そんな子がぶたれたり蹴られたりするの、視たくないよ。 と、思っていた……が、しかし。 ウチの心配をヨソに、その後の展開はバラカスの言った通りになった。 女の子は強くって、ううん、強すぎて、ウチはポカンと眺めてしまった。 しかも、 【こんのクソ野郎共がぁぁぁ! おまえら全員※※※※※※※(ピーーーーーー)してやるからなぁ! でもって※※※※※(ピーーーー)で、※※※※※※※※※(ピーーーーーーーー)にしてやるぜぇ!!】 口悪……、 追いかけていた男女数人。 女の子が振り回す木刀に、数分で地面に沈んでしまった。 【あひゃひゃひゃひゃ! 何人いたって関係ねぇ! アタシに勝とうなんて1億年早いわ! 楽勝!】 女の子は下品に高笑いをした挙句、取り出した携帯で、倒れた人達をバックに自撮りをするとスキップをしてその場を去っていく________ ________なに今の。 なんか……す……すごかったな。 05703929-9aca-4883-94c4-7765f73e6209 2021.11.15挿絵追加。 モニター画面に映っていた女子高生です。
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