2371人が本棚に入れています
本棚に追加
『…………ぁ……ぁあ……』
まともな言葉が出てこない。
霊体は震え、喉が詰まって息をするのもままならない。
涙が溢れ、視界が歪んで2人の顔も歪みだす。
ウチはもつれる足を前に出し、モニター画面に近付いた。
2人の顔にさわりたかったし、もっと近くで視たかった、……だけど途中、身を切る思いで足を止めた。
『バ、バラカス、』
あ……やだな、声が震えてる。
なんとか落ち着かなくちゃ。
『なんだ?』
小さな声を聞き取る為か。
短い返事のバラカスは、大きな霊体をうんと屈めてウチを視た。
『あ、あのね、ダメだよ。バラカスの気持ちは嬉しいけど……こんなコトしたら白雪ちゃんに叱られちゃう』
『叱られる? なんでだよ、んな訳ねぇだろ』
『そんな訳あるよ。だって……バラカスも知ってるでしょう? モニターを扱えるのは、【光道開通部】のチーフ職以上。……ウチは座学の新人だもん。視たらダメなんだ、』
そう、視たら駄目なの。
そりゃあ……本当の事を言えば視たい、視たいに決まってる。
だけどさ、もしそんな事をしたら、
____それがルールだわ、
____ルールを破ればペナルティがつく。
____視た本人と、それから上司である私にもね、
白雪ちゃんに迷惑がかかる。
『ああ、なるほど。ココでお前が視たら白雪に迷惑がかかるから、それで我慢してるのか。……へぇ、おまえスゲェな。俺なら迷わず視るけどな』
呆れたように目を細めるバラカスは、ニヤリを笑うとそう言った。
『そんな堂々と言わないでよ。とにかくね、ウチの決心が鈍らないうちにモニターを消して。そうでないと……いつもまでもココにあったら、気持ちが負けてしまうかも』
最初のコメントを投稿しよう!