第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

255/285
前へ
/2550ページ
次へ
モニターに背中を向けて、パンダの毛皮をぎゅーっと掴んだ。 引っ張るつもりはもうないけど、何かにつかまってないと視てしまいそうなんだ。 バラカスはそんなウチをゴシゴシ撫でつつ、 『ホントに視ないのか? せっかく父ちゃんと母ちゃんが映ってるのに勿体ねぇ。マジョリカは白雪みてぇに真面目だな。ほーん、そーか。ま、いいや。んじゃあ俺だけ視るわ』 なんて言ったんだ! 『えぇ!? 消さないの!? バラカスは視るの!? なんで!?』 『なんでって、そりゃ視るさ。だってよ、こりゃあメンテナンスだぜ? 画像の映りをチェックしねぇとな。屋外映像はさっきので済んだからよ、次は屋内だ。ちょうど家の中が映ってるしサンプルとしてピッタリだろ』 『メンテって……じゃ、じゃあさ、別にウチのオウチじゃなくても良くない? どこか違うオウチにしようよぉ! ささ! 爪を鳴らして! ほらほら早くぅ!』 『あぁ? やだよ、面倒くせぇ。散々切り替えたんだ、もういいだろ。それによ、マジョリカの父ちゃんと母ちゃんが視てみたかったんだ。だからな、メンテついでに俺は視る。で、おまえは視ないんだっけ? いいさ、構わねぇ。好きにしろ』 『えぇぇぇ……そんなぁ……』 なにこれ、普通はさ、こーゆー時ってさ『じゃあ消すよ』ってならない? なんで消さないの? なんでパンダだけ視るの? どーしてー!? それでも、どうにかこうにか頑張った。 モフモフ毛皮を両手で掴んで、パンダのお腹に顔を押し付け、モニターを視ないようにしてたんだ。 なのにバラカスときたら…… 『へぇ、マジョリカの瞳の色は親譲りか。珍しいな両親共にヘテロクロミアなんてよ』 とか、 『マジョリカは父ちゃん似か。目なんか笑っちまうほど似てるじゃねぇか。だけど口元は母ちゃんだな』 とかとか。 なぜかパンダは大騒ぎ。 ウチはモニターが気になって気になって仕方がなかった(でもガマン)。 …… ………… ……………… 『マジョリカ、ホントに視ないのか? ここに白雪はいないんだぜ? 視ちまえよ、ケケ……黙ってりゃあバレやしねぇよ、ケケケケケ!』 うぅ……誘惑だ……うぅぅ……神様、どうかお助けください……ココに悪いパンダがいます……パンダが誘惑するんですぅ……! 『ほーれ、ちょっと振り向きゃ視えるぞー、ほーれほーれ』 うぅ……うぅ……悪パンダめ……ウ、ウチは……ウチは…… 『み、視ないったら視ないよ! もぉやだぁ! 白雪ちゃあん、おーたーすーけー!』 半べそになりながら、ここにはいない友達に助けを求めた時だった。 バラカスは急にウチを抱き上げて、目線を同じ高さにしたの。
/2550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2370人が本棚に入れています
本棚に追加