第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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わ……大きい。 バラカスの顔、こんなに近くで視たの初めてだ。 楕円の黒縁、その真ん中には宝石みたいな瞳があるの。 黒くてキラキラ、その両方にウチの顔が映ってる。 『マジョリカよぉ、おまえは真面目だな。白雪に迷惑かけたくねぇって分かるけどよ、本当は視たいんだろ? 父ちゃんと母ちゃんの顔をよ』 半分笑ったバラカスが、ウチに向かってこう言った。 視たいかって……、 『そりゃあ視たいよ。でも視ない。白雪ちゃんに迷惑かけたくないもん。ウチね、白雪ちゃんにはすんごく感謝してるんだ。ウチとジーナを助けてくれた。白雪ちゃんがいなかったら、ウチはいつまでも光る道にいただろうし、ジーナだって生きてないもの』 それだけじゃない、白雪ちゃんのおかげでこの髪がある。 白雪ちゃんのおかげでタッキーさんともマザーさんとも、そしてバラカスとも知り合えた。 『ああ、そうだったな。おまえが死んだ時、(わり)(ヤツ)に襲われたと聞いてる』 『……うん、すごく怖かったよ。襲われたのはウチだけじゃない。ジーナも……ウチの友達も危なかったんだ。白雪ちゃんには感謝しかないよ。だからね、白雪ちゃんに迷惑をかけたくないし、悲しませたくもない。パパとママの顔、視たいけど……いつかは会えるんだ。だから……ガマンするの』 言いながら、最後の方は涙混じりになってしまった。 思い出すと少し怖い、でも……大丈夫。 だって今は独りじゃないから。 『そうか、ガマンするのか。マジョリカは素直だな。それに……良くしてもらえば、それに対してキチンと感謝が出来る』 『キチンとって……そんなコトは当たり前でしょう?』 『あー、ん、そうだな。本当は当たり前なのかもな。でもよ、それが出来ねぇヤツはいっぱいいる。元々感謝の気持ちがねぇクソはもちろんだが、感謝はしてても自分の利益を優先して、結果裏切るヤツもいる。いろいろさ』 『……ふぅん、そうなんだ……ウチはそゆのやだな……』 『そうか。そうだよな、嫌だよな。よし、マジョリカはこれから先、ずっと変わらずマジョリカのままでいろ。わかったな』 『……なんだそりゃ。ウチはウチだよ、ずっと変わらない』
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