第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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『ずっと変わらねぇのか、……そうか、ならいいや。で、話は戻るがよ、意地張ってねぇでモニター視ろ。せっかく父ちゃん達が視れるんだから、……おっと、話は最後まで聞けって。あのな____』 この後、バラカスは話してくれたんだ。 白雪ちゃんがどういうつもりで ”臨時メンテナンス” を依頼したのかを。 ウチに伝言を頼んだ時、なんでわざわざ ”今日あった事をバラカスに話しながら伝えてちょうだい” と言ったのか。 その意味を教えてくれた。 白雪ちゃんはさ、どうにかして、ウチにパパとママの顔を視せようとしてくれたんだ。 それは簡単な事ではない。 モニターの視聴が許されてるのは【光道開通部(こうどうかいつうぶ)】の一部のオペレーター……と、開発者であるバラカスだけ。 【光道開通部(こうどうかいつうぶ)】では、仕事に必要な時以外、モニターの視聴は一切禁じられている(モニターをただ起動するだけでもペナルティがつく)。 起動も視聴も当然アクセスログが残る。 いつ、誰が、どこで起動したか、どこの場所をどれだけ視聴したか、そういったものすべて記録されるから、内緒にしてもすぐにバレてしまう。 それだけ取り扱いが厳しいモニター……なんだけど、これを自由に視聴できる唯一の者がいる。 それがモニターの開発者であるバラカスだ。 視聴の為の権限は【光道開通部(こうどうかいつうぶ)】の(おさ)、白雪ちゃんよりも多く持つという。 バラカスは開発から定期メンテナンスまで、すべてイチパンで行ってるんだそうだ。 メンテナンスは数か月に1度。 それ以外は自動監視システムで警報が出た時と、【光道開通部(こうどうかいつうぶ)】の(おさ)から依頼があった時。 このどちらかの場合のみ、臨時にメンテナンスをするのだ。 『俺はよ、今回【光道開通部(こうどうかいつうぶ)】の(おさ)からメンテの依頼を受けただけだ。いつもはな、白雪が同席するんだよ。アイツはシステムの事なんか分からねぇ。だが分かねぇからこそ、メンテナンスに必要なんだ。俺は仕様もなにも分かってるから、取り扱いが複雑になっても、それに気付く事が出来ねぇ。そういった穴を埋める為に、あえて素人に来てもらう。実際に操作をしてもらう事もあるし、映像を視てもらう事もある。それで、ココが分かりにくいと指摘されれば、その都度改善するんだよ。だからな____』 ウチがメンテナンスに同席してモニターを視る事は、ルール違反にならないのだと言った。 『で、でも! ウチは ”(おさ)” でもないし ”チーフ” でもないよ。光道(こうどう)に入って一週間の座学の新人だ。そゆのって、いけないんじゃないの……?』 心配でそう聞くと、ケケケと笑ったバラカスが答えてくれた。 『そんなコトはねぇよ。新人とかシステムに疎いヤツほど、良い意見が聞けるんだ。一番分かってねぇヤツのレベルに合わせりゃ、誰でも簡単に使えるってコトに繋がるからな』 『そっか……じゃあウチでも良いってコトなんだ……』 『そういうこった。で、モニターの試運転では、当然、現世のどこかを映さなきゃならねぇ。それは俺がテキトウに選ぶんだ。マジョリカは一言だって ”ココが視たい” なんて言ってねぇだろ?  俺が選んだ場所を視た所でなんの問題もねぇ。ルール違反にならんのさ』
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