第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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『だからよ、安心して好きなだけ視りゃあ良い。なんだったら菓子でも用意してやっか?』 バラカスはニヤリと笑って片目を瞑ると、ウチを床に降ろしたの。 ウチの顔がモニターに向くように、そっと、優しく、まるで壊れ物を置くように。 『バ、バラ、バラカス……ウチ……ウチ……』 ”ありがとう” と言いたいのに、涙がジャマして言葉が出ない。 バラカスは、そんなウチをギュウっと抱きしめこう言った。 『一晩中でも視てればいい。気が済むまで付き合ってやるからよ』 あ……ダメだぁ。 そんなコトを言われたら、ますます涙が止まらない。 神様……、さっき言ったのはナシにしてください。 ココに悪いパンダはいません、 優しいパンダがいるだけです。 『さてと、夜は長いぜ!』 パチン! 楽しそうなバラカスが、爪を鳴らして出したモノ。 それは……ふっかふかのクッションと、うんと大きな古タイヤだ。 この2つを並べて置けば……モニター前、特等席の出来上がり。 …… ………… ……………… その後、ずっとモニターを眺めていた。 パパとママと、それからジーナの顔も視た。 そうそう、ジーナの横にはマザーさんがいて、2人はすっかり仲良しになってたの(マザーさんも幽霊だけど、魔法を使って生きてる人にも視えるようにしてる)。 ウチが死んで3か月。 途中みんなは、それぞれ泣いていたけれど「マジョリカに笑われる」、そう言って笑顔になってくれたんだ。 ウチはそれが嬉しくてたまらなかった。 泣いたってかまわないけど、だけどやっぱり心配になっちゃうもん。 だから笑顔でいてほしい。 いつか……そう、いつかまた必ず会えるから。 それまで笑って過ごしてほしい。 なんて……そう思うのに、ウチは涙が止まらない。 でもいいの。 これは嬉しい涙だもの。 隣に座るバラカスは、時折、ウチの頭を黙って撫でてくれた。 手のひらが温かくて、なんだかすんごく安心する。 『マジョリカ、』 ふと、バラカスがウチを呼んだ。 『なぁに?』 『…………淋しいか?』 『…………ううん、淋しくないよ。だって黄泉(ここ)にはバラカスがいる、白雪ちゃんだっているもん』 『そうか、俺と白雪がいたら淋しくねぇか』 『うん、淋しくない』 『なら良かった。……マジョリカ、いいか? よく聞け。おまえの両親は現世にいて黄泉(ココ)にはいねぇ。だからよ、黄泉の国では俺がおまえの父親だ。俺がおまえを守ってやるし、ありったけの愛情をくれてやる。おまえは2度と独りにならねぇ。俺達はファミリーだ』 この時のバラカスは、白雪ちゃんより真面目な顔でウチのパパになると言ったんだ。
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