第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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『心配かけてごめんね。あのね、大丈夫だよ。大倉はね、白雪ちゃんの次に強くて、バラカスみたいに口が悪くて、だけど優しいの』 改めて……大倉のコトを話そうと思った。 白雪ちゃんに心配かけたくないのは勿論だけど、もし、大倉が誤解されてたらヤダなぁっていうのもあったんだ。 あの子はバラカスみたいに口が悪い、だから誤解もされやすい。 『弥生ちゃんが優しい子なのは知ってるわ。光道(こうどう)では無茶ばっかりって有名だけど、その無茶は死者達の為を想っての事だもの。 だから私、昔からキライじゃなかったの。乱暴な言葉遣いもバラカスで慣れてるしね』 “昔からキライじゃなかった” 、そか……白雪ちゃんは大倉のコト、そんな風に思ってたんだな。 なんだろ、ちょっと嬉しい。 『ウチもね、キライじゃなかったよ。そりゃあ困るコトも多かったけど、あの子は自分が楽をしたくて無茶を言った事は1度もない。ぜんぶ死者達の為だった。だから応えようと思えたんだもの』 懐かしいな……って、チガウ、まだ思い出になってないや。 だってコレ、今も続いてるんだもの。 しかもさ、最近ではウチを名指しで呼んでくる。 ____マジョリカー! 聞こえるかー? ____またお願いがあるんだよー! ____おーいおーい! お姉ちゃーん! って。 …… ………… 白雪ちゃんは冷たい緑茶をゴクゴクと飲み干して、カップを置いて息を吐く。 上げた顔、おでこに薄っすら汗を浮かべて、数秒のためらいを視せた後に言ったんだ。 『お、思い切って聞くわ。弥生ちゃんが良い子なのは分かってるけど、でも、……ううん、彼女が良い子だからこそ、マーちゃんが無理してるんじゃないかって心配なの。弥生ちゃんはマーちゃんにとって恩人だから、感謝して、それに応える為に家族になったとしたら、……それは、正しいようで正しくないと思うのよ、』 おでこの汗が玉に変わった。 白雪ちゃん、きっと勇気を出して言ってくれたんだろな。 ウチのコトを心配して、それで、こんなに汗を搔きながら。 『……ありがとう。ウチ、白雪ちゃんのコトが大好きだよ。…………あのね、白雪ちゃんが言ってくれた事 ”正しいようで正しくない” 、 これは分かってるつもり。…………でも、最初から分かってた訳じゃない。白雪ちゃんの言う通り、1番最初はほんの少しあったんだ。大倉が好き、よりも、大倉は恩人だからって気持ちが。でもね、それは徐々に変わっていったんだ、』
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