第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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『そっか、……でも、ウチは1度会いたいな、大倉にはちゃんとお礼を言わなくちゃ。だってウチを守ってくれた。あの子がいなかったら【闇の道】に捕まって、そのまま地獄に流されてたもの、』 ____もう駄目だと何度も思った。そのたびあの子が来てくれた。何度も何度もボロボロになりながら。大倉は、大事な髪を切ってまでウチを助けてくれたんだ。 『ああ、そうだな。近いうちに連絡を取って3人で会おう』 『うん、ウチが現世にいる間にそうしたい。顔視てお礼が言いたいもん。……ねぇ、大倉、全然連絡してこないね。この前だって黙って帰っちゃったし、こう音沙汰がないと心配だよ。今頃なにしてるのかな?』 ____大倉はアパートに一人暮らしだと聞いている。どんなことろに住んでるんだろう? ゴハン、ちゃんと食べてるのかな? 『エイミーさんの話だと、1か月の長期休みを取ったそうだから、今頃はゆっくりしてるんじゃないかな』 『長期休み……そっか、そうだったんだ。じゃあ、もしかしたら実家に帰ってるのかな? 怪我もしてるし、身の回りのコトを1人でするのは大変だろうし』 ____そうだといいな。色々あったし、実家でのんびりパパとママに甘えてさ。 『いや……それはないよ。弥生は昔から親とうまくいってないんだ。実家はあるけど、ここ何十年も帰ってない。向こうから連絡もないし、絶縁状態だからね』 『親と絶縁!? なんで? せっかく同じ現世にいるのに…………じゃあ、大倉は、ずっと1人なの? 今まで……ずっと?』 ____信じられない……親だよ? 家族だよ? どうして? 『そうだ、今までずっとだ。家族と言っても母親と血の繋がりはなくてね。両親は再婚なんだ。弥生は父親の連れ子。のちに妹が生まれて、元々うまくいってなかったのが余計にうまくいかなくなった。弥生は、家族のカウントから外されているんだよ』 『外されてるって……なにそれ……そんなの酷い……』 ____ウチがパパ達と会えないのとは事情が違う、同じ現世にいるのに、家族なのに、なんで大倉だけのけ者なの……? あんなに優しい子なのにどうして? 『酷いよな。だけど……ん、それぞれ事情があるんだよ、』 『そうかもしれないけど……大倉、大丈夫かな? 連絡が来ないのは、ウチらに気を遣ってるだけなら良いけど……倒れたり……してないよね? 心配だよ……怪我だってしてるのに、親にも頼れない、アパートで独りきりだなんて……』 ____背中が冷たくなってくる……思い出してしまった。ウチが死んですぐの頃、(ひと)のいない原っぱにオウチを建てて独りで住んでた。すごく不安だったよ。毎晩悪夢に悩まされ、孤独が辛くて気がおかしくなりそうだった。2度とあの頃に戻りたくない、そう思うほどキツかった。……大倉も、同じなのかな……? 『弥生は体力もあるし傷の治りも人より早い。だから倒れてはいないと思う……けど、あとで様子を視てみるよ』 『うん、そうしてあげて。何かあったらすぐに行ってあげなくちゃ、』 あの頃……すごくすごく辛かった。 だけどウチには白雪ちゃんとバラカスがいた。 たっぷりの愛情で2人に救ってもらったの。 じゃあ…………大倉は? ジャッキもいなくなった大倉は、一体誰が救ってくれるんだろう……?
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