第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

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どちらかを選べばどちらかは選ばれない、……当たり前だよね。 そんなの子供だって分かるよ。 ジャッキはウチを選んだの。 ジャッキと未来を歩むのは、大倉弥生じゃなくマジョリカ・ビアンコだ。 …… ………… ……………… 良かったじゃない、望み通りになったよ。 ウチはジャッキを取り返したんだ。 ____現世に好きな女性(ひと)が出来てしまった、 あの時。 ジャッキにそう言われた時、ウチはもう一度死ぬんじゃないかと思うくらい辛かった。 そんなのヤダ、信じられない、ウソだと言ってよ、……そう思って、だけどそれから連絡が途絶えて、このまま話もしないで別れる事になるのかと、恐怖さえ感じた。 居ても立っても居られない……だからウチ、現世に来たんだ。 出会ったばかりの平蔵に無理を言ってまで、支払えるお金もないのに、それでも頼み込んだんだ。 平蔵は、 『お金なんて気にしなくて良いの。マジョリカちゃんは志村君が好きなんでしょう? 気持ちを確かめたいんでしょう? だったら勇気を出して行ってらっしゃい。うちの弥生ちゃんと、とことん話していらっしゃい。ただし、女の子同士仲良くね。喧嘩なんてしちゃ駄目よ、……って、そんなの無理な注文か。ふふふ、大丈夫。1人、喧嘩になっても止めてくれる子をつけるから。その子がいれば、たとえどんな険悪な空気になっても浄化してくれますよ』 なんて、ニコニコ笑って送り出してくれた。 大倉と、とことん話すつもりでいたのに、現世に着いて、初めて顔を視て、ウチは感情を抑える事が出来なかった。 大倉があまりに綺麗であまりに大人で、ウチは1つも勝てる所が無くて、でも負けないって思った。 ジャッキを取り返すんだ、大倉には渡さない、これから先、1000年経っても一緒にいるのはウチなんだから……って。 そう強く思って、願って、縋って…………そして、望みは叶ったの。 ジャッキはウチを選んだ。 夫婦は元通り、これから先もずっと一緒。 だから、だからさ、もっと嬉しくて良いはずなんだ、 …………なのに。 モヤモヤするんだ。 大倉の顔が頭に浮かんで消えないの。
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