第二十一章 霊媒師 ……もいる、黄泉の国の話

270/285
前へ
/2550ページ
次へ
浮かぶ顔は淋し気で、背中を丸めて黙ってる。 その姿が小さなヤヨイと重なって、まるであの子も子供みたいに思えてしまう。 家族はいるけどいないと同じで、ジャッキも離れてアパートに独りきり。 大倉、辛いだろうな…………だからと言って、ウチに出来る事はない。 だって……だってそうでしょう? 大倉を救う事が出来るのは、幸せに出来るのは、黄泉と現世を合わせてもジャッキしかいない。 だけどウチだっておんなじだ。 ジャッキがいないと、ジャッキでないと駄目なんだ。 ずっと一緒にいたい、独りになったらウチがウチでなくなっちゃう。 大倉は恩人だけど、すごく感謝はしてるけど、ジャッキだけは譲れない。 『……もう、考えるのはよそう』 自分に言い聞かせるように、あえて声に出してみた。 仕方がないよ……大倉も辛いと思うけど、いつかそのうち別の誰かを好きになるかもしれない。 そしたらさ、ジャッキのコトもウチのコトも忘れてさ、すんごく幸せになっちゃうの。 大丈夫、……大丈夫、きっとそんな日が来るはずだ、辛いのは今だけだよ。 …… ………… ……………… ……ソウカナ……ホカニスキナヒトナンテ……デキルノカナ……? ソンナヒトガ……デキルクライナラ……トックニ……コンナニナヤム……コトモナイ………………あ、 ああもう、また考えてしまった。 ワザとじゃないのに、気を抜くと浮かんできちゃうんだ。 どうしよう……ウチ、この先もずっとこんななのかな? 大倉が気になって、ふとした時に頭に浮かんで、そのたびにモヤモヤして。 せっかく現世でジャッキといるのに、気持ちが分散してしまう。 『なんかスッキリしないなぁ。ん…………あ、そだ。こういう時は霊体(からだ)を動かせばいいんだ』 大好きな白雪ちゃんの教えだ。 ____悩んだら筋トレをしなさい、 ____鍛えれば鍛える程導いてくれるわ、 うん、ウチ頑張るよ。 筋トレとまではいかないけれど、ちょっと本気でストレッチとか、そゆのをしようと思ったの。 霊体(からだ)を伸ばせば気持ちが良いし、気分転換にもなる。 ウチは両手を大きく広げ、『うーーーん』とゆっくり伸びをして、その後、あっちに捻り、こっちに捻り、前屈に後屈、屈伸なんかもしちゃうんだ。 あー最高、頭の中がスッキリするよ。 『えぃ!』 気分がノッて掛け声なんかもかけてみた。 リズミカルに動くうちになんとなく、上げた両手をブンッと下に振り下ろす。 右も左も同じように振り切って、……ん、この動きって何かに似てない? なんだっけ? なんだろう? 最近視たよ、こういう動き…………ん……あ、分かった。 これってさ、大倉のカタナの動きに似てるんだ。
/2550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2369人が本棚に入れています
本棚に追加